白い花のバラッドⅠ



        ◇  ◇  ◇



白い光が弾けた瞬間、ヒノカの腕の中からヒカリの温もりが消えた。


消えてしまったヒカリの温もりを感じながら、ヒノカの瞳から涙が一筋零れた。


我が子を手放した己の判断は正しかったのかどうか。


それを教えてくれる人は既にいない。


キュッと唇を噛み締めて気持ちを引き締める。哀しみに浸る時間はないのだ。


ゆっくりと振り返り前を見据えれば、無情にも見えてくるのはカイナを筆頭にした天界の者達。ルカの面影を写す双眼は怨念を乗せた眼差しをこちらに向けている。


彼等の真っ白な衣服には所々に赫い色が見えて、逆上しそうな頭をどうにか冷やし落ち着ける。


此処で死ぬわけにはいかない。娘との一時の別れを永遠のものにするつもりは毛頭ないのだ。必ずあの子を迎えに行く。


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