白い花のバラッドⅠ



 「子供はどこへやった?」

 「さあ?」

 ヒノカは涙を拭いもせずただ笑う 。
 
 「ルカは?」

 「殺した」


 最愛の人の生死を問うと冷酷に伝える祖父に怒りと絶望が湧き上がる。


 己への情がこの義父にないことなんて知っているが、せめて我が子に対する情はなかったのだろうか?仮にもルカはこの男と血の繋がりのある実の息子だというのに。


 「そう」



 ヒノカは笑いながら拳を握り締める 。爪が痛いくらい食い込んで、ヌルリとした液体に気付くまで強く。


 「ねえ、カイナお義父様 。ヒカリをどうするつもり?」

 「君も愚息と同じ質問をするんだな」


 呆れたような声音にはルカへの情けなど、愛など微塵も感じられない。


 「あれの血は強大だ。天使と悪魔だぞ。我々はあの血で軍隊を作る。そして魔界をも天界のものとする」

 「ッバカなことを!」


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