白い花のバラッドⅠ
母から教えてもらった一番好きな唄。
風に乗って鳴る声が小さく震えると同時に視界が涙でボヤけてくる。
頭がズキンズキンと痛みを訴える。
それさえも無視して歌い続けていると、
「誰だ?」
唄を遮るように風に乗ってきた声に喉がつっかえたようにヒュッと息をつまらせた。
体は硬直して、思考すらも奪っていく。逃げないと、と思う気すら起きないのだ。
シンとした其処は風と揺れる花の音しかしない。
「誰だ?」
心臓は激しく脈を打つけどアタシの頭には何一つ打開策は浮かばない。ボーッとしてただ死を待つだけのように感じる。
再度かけられた声にもなんの感慨も起きずにいた。
だって、もうどうすることもできないように感じる。アタシにはあの森が世界の全てで、逃げる場所なんかない。