白い花のバラッドⅠ

 「.....?」

 「ディランの方こそ怖がらせてるじゃん」


 呆れたようにルディはディランと呼ばれた赤髪の青年に髪を引っ張る。



 「引っ張んなバカ 。つーか怖がらせてねぇよ」



 彼は悪態をつくと大きく溜め息を吐いて「おい」とぶっきらぼうに声をかけた。そのことに、体が大げさに跳ねあがってしまうアタシの何と不様なことか。


 「怖がんなって。大丈夫か?」


 ディランはゆっくりと立ち上がりアタシに近づいた。


 それがどんなにアタシに恐怖を与えているのかも知らずに、不躾にアタシに手を伸ばしてくるから────



 「嫌ッ!!」


 アタシはその手を力いっぱい拒絶し顔を両手で隠して彼の姿を目の前から消した。



 「あー、ワリィ」


 その男が伸ばした手を引っ込めたのを気配で感じる。


 しかし、アタシの震えは止まらなくて、ガタガタと震えてすごくみっともないことだろう。

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