白い花のバラッドⅠ

 おもむろに顔を僅かに動かしてその人物を視界に入れると、不自然なほどに心臓がどくりと脈打った。



 部屋に入ってきたその青年は月のようだと、ハッとするくらい綺麗な月だと脳が勝手にそう思った。
 


 「目、覚めたよ」


 ルディが青年に告げると、青年は怖いくらいに綺麗で顔をしてアタシのいるベッドに近付いてくる。


 アタシとは対照的な黒髪が靡いて、これまた正反対の深い碧の色をした瞳がアタシのことをジッと見つめる。

 
 「あ、の……」


 見つめられて何か言わなければと思ったがそんないきなり言葉が出てくる筈もなくどもった声が吐き出された。


 見透かされそうな碧色の瞳は探るような視線を向けてくる。



 「怪我はしてんのか?」


 それはアタシに聞いているのか、それとも周りの人に聞いているのか。でもその人が見つめているのはアタシなのだからその疑問はきっとアタシへのもので……。


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