白い花のバラッドⅠ


 この人の普段の姿なんて出会ったばかりのアタシにはわからないが、面倒くさがられているというのは嫌でも感じ取れる。


 無意識に顔はその人から背けられていた。その行為が何を意味するのか自分でもわからないが、アタシの思考は別のところへと追いやられた。


 『魔界』という単語に意識は集中して、それこそがアタシの目指していた場所なのだという事に気付いたのにほんの僅かの時間を要した。
 


 どうやら頭は正常に働いているようだ。



 でも、どうしてアタシは此処にいるんだろう。


 アタシが居たのは花が舞う、哀しくなるほどに綺麗な処だった筈。


 ………そうだ。



 「……あ、の」

 「……」

 「アタシを、此処に連れてきた人は……誰ですか……?」


 あの時、アタシは確かに其処にいて、誰かに会ったような気がする。


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