白い花のバラッドⅠ
「何故?」
すぐの返答に答えなんて思い浮かばなくて、乾いた吐息だけが吐かれた。
本当に、何と言ったらいいのか。
父と母が殺されたことを、自分の存在を、何もかも洗いざらい伝えてしまってもいいのだろうか。それを知った時、彼等はアタシをどう思って、どうしようとするのだろう。
アタシの存在がわかった途端、敵になる可能性だってある。
「あの…」
アタシは唇を噛み締めて必死に答えを探した。
口ごもってしまうアタシに苛立ったのか目の前の青年がわかりやすく顔を顰めて舌打ちをした。静寂に響く音にビクリと体を震わせると青年の眉間にシワが寄る。
「おい、ユウ」
ただ獣耳の彼だけが、青年を窘めてアタシを優しい眼差しで見つめてくれたお陰で多少は持ちこたえることが出来た。