白い花のバラッドⅠ
「トーガ物騒なこと言わないでよ。ヒカリ怖がってるじゃん」
「冗談だよジョーダン」
獣耳をピクリと動かして苦笑する彼は今しがたの冷たい瞳なんてしていない。でも、とても冗談になんて聞こえなかったアタシの顔は青ざめていることだろう。
「そんな似てるか?」
そんなアタシを他所に少し困ったように周りに問うディラン。
「目つき悪いもんね」
「多少な」
ルディとトーガが茶化すように言うと一層ディランはムスッとした顔になる。
「なあユウ、お前もそう思う?」
ディランは先程から何も言葉を発しない青年、ユウに問いかけた。
白い椅子に座り窓の外を眺めているユウは
「あ?」
黒髪を小さく揺らして視線だけこちらに向ける。
窓の外は暗くて綺麗な月が見えた。
ああ、やっぱり月のような人だと、アタシは素直にそう感じた。