白い花のバラッドⅠ

 ————コン


 部屋の扉をノックする音が響いた。

 その音にアタシの身体はビクッと小さく震えた。



 トーガは身体を起こして、


 「ユウか?」


 扉に声をかけると扉がゆっくりと開いていく。


 入ってくるのは長い黒髪を靡かせ、深い碧の瞳をもつユウ。


 ユウはアタシ達を見ると眉間に皺をよせて訝しげにこちらに視線をやる。ベッドの上で男女が抱き合っていたら誰だってそうなるだろう。当然の反応だ。


 トーガはその視線に気付いていないのか、それとも気付いていて敢えて何も言わないのか。



 「ヒカリ、用が済んだらまた来る」



 頭を撫でベッドから出るトーガをアタシはずっと見つめていた。


 きっとアタシの顔は今にも泣き出しそうだったと思う。


 部屋を出ていく背中に不意に寂しさが込み上げる。


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