深を知る雨



 《5:00 オウ゛ラ本部》エフィジオside


「ルフィーノ、アンタわざと情報与えたでしょ」

本部の食堂で朝食を食べながら、アタシは向かいの席に座るルフィーノを睨んだ。

いくら首を掴まれていたとはいえ、ルフィーノならあの小娘を瞬間移動で飛ばした後アタシの方に来てアタシを連れて逃げるってことができたはずだ。

「だあってえ、あの状況でエフィジオと逃げたらあの子だけびしょ濡れになっちゃってたでしょお?男としてそれはどうかと思ってえ。結局3人とも濡れちゃったけどお」

女に対して甘々野郎なルフィーノは、そんなことで内通者の名前をあの小娘に教えてしまったらしい。

「はぁ……だから言ったのよ。アンタは女相手だとろくな仕事しないから先に男2人の方取り押さえた方がいいって」
「やだよお。なあんでおれが男捕まえなきゃいけないのお?楽しくもなんともないしい」
「そんなこと言って、結果的に女の方まで取り逃がしたわよねぇ?ん?」
「美しい蝶は捕まえるのが難しいってことだよお」
「あのちんちくりんのどこが美しい蝶よ?乳の形も尻の形も微妙じゃない」
「あのロリ顔とロリ体形を仕付けてみたいと思わないなんてエフィジオもまだまだだねえ」

まだまだって、お前は一体どこを目指してるんだ……という言葉を飲み込む。

別に今はルフィーノの趣味について話し合いたいわけではない。

今回の件に関しては確認には良かった、と前向きに考えるしかないな。正直あの内通者に対して疑いが無いわけではなかったのだが、日本帝国軍のSランク能力者2人の能力についての情報は正しかったのだから、ある程度は信用していいだろう。

問題はあの女が何者か。Sランク能力者の連れとなると、重要人物と考えていい。

「あの子、伝えても無いのに早い段階でおれがオウ゛ラだってこと気付いてたしい、情報量は多そうだよねえ」
「電脳能力者なら、そりゃ色々調べ放題でしょうね。この時代」

日本帝国の電脳能力者といえば……今も噂される、実在していたかどうかも分からない伝説の電脳能力者の話を思い出す。

8年前の戦争で各国に最も恐れられていたエスパーソルジャーで、たった1人でいくつもの部隊を壊滅に追いやる実力の持ち主だったとか。

まぁ、そんな化け物並みの奴がいたなんて、アタシは信じてないけど。



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