深を知る雨


小雪が異変を感じたのは雪乃たちが帰って行った数日後だった。

部屋から出てきた義母は、話し掛けても返事をしなかった。

怒って無視をしているというわけでもなさそうだった。

まるで耳が聞こえていないかのように、小雪の謝罪に対し返事をしなかった。


義母は部屋に引き篭もりがちになった。たまに出てきては2人分の食事を作り、しかし自分は食べずに部屋に戻る。

暫くして出てきたかと思えばまた2人分の食事を作り、1人分食べて部屋に戻る。

深夜に物音がすると思えばまた食事を作っていて、小雪はそんな義母のよく分からない行動に戸惑った。

「これ、安く売ってたの」

またある日、義母はどこかで買ってきたブレスレットを嬉しそうに小雪に見せた。

しかし30分ほど経つと、義母はまた同じことを言った。

「これ、安く売ってたの」

―――義母の様子は日に日におかしくなっていく。

突然叫び出したり、何か聞こえると言い出したり、近所の人間関係についてありもしないことを言ったり、自分に害を与える電波を感じると言ったり、空に浮かぶ星を見てあの衛星が私を盗聴しているだのとわけの分からないことを言い出したり。

そこで漸く病院に連れていこうと思い始めた小雪は、行きたがらない義母を瞬間移動で無理矢理病院へと連れていった。

様子を見るため1週間程度の入院ということになったが、義母は退院させられない状態になり、入院期間は延びるばかりだった。

治癒能力を持っているとはいえ、精神的なものに対しては有効ではない。小雪に義母は治せない。

唯一小雪の気持ちを知る、育ての母親。彼女の精神状態は悪化し、小雪とまともな会話ができなくなった。




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