深を知る雨
「いいか?俺たちEランクがパフォーマンスで武器にできるもの、それは超能力だ!」
「えーでも超能力を使ったパフォーマンスなら上のランクに負けるんじゃねぇっすか?」
「それがだ!なんと別のランクはパフォーマンスでの超能力使用が禁止されている!」
「な、なんだってー!」
「まぁ、そりゃ他国に手の内を明かすような真似はしたくないでしょうね」
「Eランクはどうせ超能力戦ではろくに戦えないから、超能力の種類を晒しても特に問題はないと思われてるってことだな」
「ネガティブなこと言うな!!」
筋肉ムキムキのEランク隊員たちが話し合っている。
お前らまだパフォーマンスの内容決めてなかったのか……。
最近ずっとテキストチャット機能を有するSNSを使ってグループチャットしてたからてっきりもう決まってんのかと思ったぜ。
因みに私はそのグループに入ってない。他のEランク隊員の端末に侵入してたまに見てただけだ。
「とにかく超能力を使うんだ。何かパフォーマンスに使えるような能力はないものか……」
「はいはい!俺、透視能力持ってます!」
「はいはい!俺は料理を一瞬でおいしくする能力持ってます!」
「うん、まずパフォーマンスでその能力をどう役立たせるのか考えてから言おうな?」
まだまだ決まりそうにないので、暇潰しに隅っこで休憩してる隊長と話そうと思って近付いたのだが、隊長は私に気付くと然り気無く遠退いていく。
あれれ?何で逃げるのかなぁ?
捕まえようと走る。隊長も走る。スピードを上げる。隊長も上げる。
暫く同じところをぐるぐる走っていたが、やはり若い体力には勝てないのか、先に止まったのは隊長だった。
「……っ、はぁ、はぁ……」
「もー隊長ってばー、何で逃げるんですか~。そんなに私のことが嫌いなんですか?何で?いっつも脅すから?」
「……分かってるなら聞くな……」
げっそりした顔で座り込んだ隊長は、ロボットを呼び出してお茶を受け取り、息を整えてそれを飲んだ。
しかし。
「がはッ!くっ、な、何だこれは!?辛……ッ、」
「隊長が私のこと嫌いなんて言うからショックで……。ロボット操作して激辛のやつと入れ替えました」
「くだらないことに能力を使うな!!」
隊長に目を真っ赤にしながら怒鳴られた。
ああ、少し遊びすぎてしまった。
隊長には一応話したいことがあって来たのに。
「あのですねー隊長。少しお話したいことがあるんですが」
「もう話しかけないでくれ……」
「何日か前、総司令に女だってことバレました」
「ハァ!?……わ、私は知らないからな。私は関係ない」
「隊長が手を回したってことは勘づかれてましたよ」
「ハァ!?」
今にも倒れそうなくらい真っ青になった隊長。この表情残しておいて、“隊長喜怒哀楽”ってタイトルで写真集販売しようかな。この人顔だけ見ればイケメンだし一部のファンに売れるかも。
「……終わりだ……」
「どうしたんですか隊長」
「どうしたも何も、違反行為がバレたんだぞ?しかも、私は超能力部隊の隊長という立場だ。色んなことを知りすぎている。記憶消去技術を使って記憶を消されたうえで軍外部に追い出されるに決まってる。もしくは殺されるかだ」
「隊長は大丈夫ですよ。私がうまくやればの話ですけど」
「……どういう意味だ?」
「ゲームを仕掛けられましてね。この軍にいるもう一人のSランクを見つけられたら私のことは隠すって言われました」
「もう一人のSランク?東宮や一ノ宮の他に、という意味か?」
あー、今の反応で分かった。隊長ならもしかしたら知ってるかもって思ってたけど、隊長も知らないんだな。
「誰かがSランクであることを隠しているらしいんですよ。それも、有名な人だと思います。私はAランクの3人の中にいると疑ってるんですけど」
「大神か?」
思いの外悩まずに薫の名前を出してきた隊長に、こちらが少し驚かされた。
「何故そう思うんです?」
「いや、あいつ何年か前から訓練の時必ず……」
隊長が何か言い掛けた時、「おい千端ァ!お前もそんな隅にいねえで意見出せぇ!」とタイミング悪く呼ばれてしまった。
「すみません隊長、続きはまた今度」
ぺこりと軽くお辞儀をしてEランク隊員たちの元へ走る。