深を知る雨
次の日の夜。
寝室で寝る準備をしていた遊は、ふと奥にいた4人がいないことに気付く。
もうすぐ消灯時刻だというのに、まだ来ていない。
4人揃ってどこへ行っているんだ?と遊は特に仲良くもないその4人に対し疑問を抱いた。
結局消灯時刻になっても奥の4人は現れず、代わりにやってきたのは育成所職員である大柄の男。
「奥の4人は問題行動を起こしたため、別の部屋に移ることになった」
定期報告のように淡々と言った大柄の男は、部屋に入ってきて鍵を閉め、遊たち残りの4人に問う。
「彼らが何をしようとしていたか、聞いた者はいないか?」
男の思考を読んだ遊は、いなくなった4人がどうなったかは分からないものの、各部屋に付けられている盗聴器の存在を知った。
奥の窓の近くに小型の監視カメラが内緒で設置されていることも。
この男は、いや、育成所の人間は知っている。
いなくなった4人が昨夜どんな会話をしていたのか。
なのに聞くということは――おそらく、いなくなった4人がどこへ行こうとしていたか知っている者がいれば、その人間も連れていく気なのだ。
「あ、ぼく……、」
「小さな声で話していたのは知っていますが、入り口近くの俺たちには内容までは聞こえませんでした。なぁ、そうやったよな」
自分の下のベッドで寝ている少年が何か言いそうになったところを、遊は遮った。
「え、あ、うん……あんま聞こえへんかった……」
話を合わせろという目の遊を見て、少年はこくこくと頷く。他の2人も、昨夜はぐっすり寝ていたから何も聞いていないと答えた。
大柄の男は「そうか」とだけ言って部屋を出ていく。