深を知る雨




遊はドアが閉まった後、端末を使って残りの3人に盗聴器の存在を知らせ、昨夜のことをもし知っていたとしても絶対に喋らないよう伝えた。

(―――…ヤバいんちゃうか?この育成所)

遊はこの日、初めて育成所に対する疑念を抱いた。

まず子供たちに内緒で寝室に盗聴器やら監視カメラやらを仕掛ける正当な目的が思い浮かばない。

あの4人がどうなったのかも定かではない。

想像できるのは、西館であの4人の身に何かあったということだけ。

遊は西館にいる杏のことを思い出し、嫌な予感に顔をしかめた。


育成所にいる間、外部と連絡を取ることはできない。

たまに親からの手紙を受け取ったり送ったりしている子供を見たことがあるが、それらは全て育成所側が1度は目を通している。


―――…育成所側が何をしようと、外部に漏れることはない。


それに気付いた遊は、その夜眠らずに、西館へ行く方法を考えた。

西館であの4人の身に何かあったのだとすると、彼らでも西館へは入れたということになる。

東館から西館へ行くセキュリティはそう厳重ではないのだろう。

しかし1度侵入されたとなると、見張りがいてもおかしくはない。

とはいえ様子を見に西館の辺りを彷徨けば、怪しまれることは間違いない。



と、なると。

(西館から来た奴に話聞くしかないな)

そう結論付けた遊は、その日からどんな時に西館から人がやって来るのか、証言を集めた。




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