深を知る雨


「やっぱSランクにいじめられたか」
「ちげーってば!泰久たちはオレに十分優しくしてくれる!」
「つまり、他の奴にいじめられたんだな?」
「いじめられた前提!?」


私の話を聞かない薫は、玄関ポーチに腰を下ろす。

何となく私も座らなきゃいけないような気になって、その隣に座った。


「ん」
「え、……おっま、ティッシュ常備してんの!?真面目か!」
「うっせぇてめぇが鼻水垂らしてっから渡してやってんだろうが大人しく受け取れ!」


押し売りされたティッシュを大人しく受け取り鼻をかむ。

この際だから贅沢にティッシュを使おう。いつもなら1枚のティッシュ小分けにして使うんだけどね。ケチ臭いとは言わせない。


「お前が真っ先に遊の元へ行こうとしなかったら、俺らも多分行ってねぇ。遊が今頃どうなってたかも分かんねぇ」


ズズーッ!


「あんな風に他人を助けようとすることなんて俺にはできねぇ。俺は、遊が復讐してぇなら放っておこうと思った。それが遊のためだと思った」


ズズズー!!


「遊のことがどうでもよかったわけじゃねぇ。誰かに復讐したいって気持ちは、嫌ってほど分かってるからだ。でもお前は違った。真っ直ぐ自分勝手に遊を助けにいった」


ズズズズズズー!


「人が喋ってる時に鼻かんでんじゃねぇ!」
「え、大丈夫大丈夫聞いてるよ!?どうぞ続けて!?」
「こっちが集中できねぇんだよ!人の話聞く気ねぇだろお前!ぶっ飛ばすぞ!」


薫が怒鳴るので仕方なく鼻をかむのを止めた。

薫は鬼みたいな顔をして、さも不服そうに聞いてくる。


「……里緒の時も。遊を動かしたのはお前なんだろ」
「さー?忘れちったわ」
「……俺はお前みてぇな人の問題に首突っ込まずにはいられねぇお節介が嫌いだ」


お節介ってなんだよ失礼な、と答えようとした時。

薫の手が私の頭を撫でた。




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