深を知る雨
「綺麗事抜きにして言うなら、貴重な戦力だからだよ」
しかし、チビの答えは俺の予想していたものとは違うものだった。
「上層部の無能力者は能力者の使い道も、価値も、全然理解してない。でなきゃAランクをそう簡単に殺そうなんて思わない。この国の軍事力は能力者に依存してる。超能力部隊に所属するAランクは3人、Sランクは2人。この5人だけでも世界の軍隊と並ぶ力がある。昔の戦争みたいに一般人の能力者を駆り出すわけにもいかねーから、1人欠けるだけでもかなりの打撃だ」
上層部の無能力者への不満。それは俺がいつも抱いていたものと同じだった。
「っははは!!」
「!?」
思わず大きく笑う俺に、びくっとして驚いた表情を浮かべるチビ。
しかし、俺は面白くて仕方ない。
「うん、せや、せやな。ほんまその通りやわ」
ひーっと引き笑いして肩を揺らす俺を、チビは何だこいつ……という目で見てくる。
―――まさかEランクのチビ隊員と意見が合うとはなぁ。
俺は可笑しさと妙な感動で思わずチビの髪をくしゃっと撫でた。ついでに触ってやった耳たぶは、予想通り柔らかかった。