深を知る雨




大中華帝国。

東アジアに位置する大国。

極めて古い時代に黄河流域に定住した民族が開いた国であり、世界最古の文明の発祥地の1つでもある。


そんな大中華帝国の現将官・佐官と橘哀花の出会いは、およそ5年前に遡る。

8年前の戦争では戦勝国となった大中華帝国だが、共通の敵がいなくなった途端国内の団結力は弱まり、民族間の争いが相次いで起こるようになっていた。

内乱は収まらず、当時世界最強国家とまで呼ばれた大中華帝国はいとも簡単に内政不安に陥った。

そんな状況であったからこそ戦わねばならず、子供だろうが何だろうが実力重視で軍のトップとして動かされ、他の民族と戦わされる羽目になる。

内戦により当時の上将が死んだ頃には、大中華帝国軍の上層部の多くは子供と言える年齢の軍人達で構成されていた。


中将の(ティエン)、当時10歳。

少将の泰然(タイラン)、当時15歳。

大校の春梅(チュンメイ)、当時15歳。

上校の明陽(ミンヤン)、当時23歳。

中校の(リー)、当時13歳。

少校の緑仙(リューシェン)、当時23歳。


若手しかいない、本来なら有り得ない構成で組織された大中華帝国軍上層部は、彼らの経験不足故に機能しなくなる寸前だった。



―――“(リン)”と名乗る、当時18歳の女性が現れるまでは。





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