深を知る雨
2200.12.10
《8:00 訓練所》
Cランク隊員の沖縄訓練が終了し、小雪がこの施設に戻ってきた。
「小雪小雪ー!!」
久しぶりに会えたのが嬉しくてタックルするような勢いで抱き着いたが、さすが小雪、私をあっさり受け止めた。倒れると思ってたのに。
「おはよ、朝から元気だね。そんなに寂しかったの?」
一週間見なかっただけなのにその微笑を随分懐かしく感じる。
「さ、寂しがってねーし!」
「嘘だ」
「…随分な自信だな」
「哀の癖は分かりやすいよ。意地張ってる時はちょっと口曲げるでしょ?」
え、マジか。知らなかった。
私より私のことを知っている小雪に何だか負けた気がして、対抗意識で私も小雪のこと把握してんだぞってことをアピールすることにした。
「じゃあオレも小雪の癖当ててやる!」
「んー?あるのかなあ、そんなの」
「あるよ!小雪、人と話す時あんま相手の目見ねえだろ?」
癖と言えるのか分からないが、小雪は私と話している時私の目を直視している感じがない。
小雪はクスッと笑い、一歩私に近付いて問うてくる。
「どこ見てると思う?」
「え?」
「俺、哀のどこ見てると思う?」
「…そ、そこまでは……」
何故か威圧を感じて、思わず一歩後退る。小雪も一歩近付いてくる。そんなことを何度か繰り返した後、小雪はふはっと柔らかく笑った。
「哀は可愛いなぁ」
遠くから「澤が笑ってるぞ…」「あの澤が…」「あいつ表情あるんだな…」なんていうCランク隊員が噂する声が聞こえてくる。
小雪、何だと思われてんだよ。
「…オレもう行くわ」
「え?何で?」
「Cランク隊員いっぱいだし、場違いかなって…」
「もう解散してるし、俺も行くよ」
「……小雪、そんなんでいいのか?」
「うん?」
「Cランクにもダチつくれよ。いつもオレといるじゃん」
見たところ他のCランク隊員は小雪に興味があるようだし、小雪さえフレンドリーに接したらすぐ仲良くなれるだろう。
Eランクに友達のいない私の言えたことではないが、今のままじゃ私が小雪の友達作りを制限してしまっているようで嫌だ。
「俺は哀がいればいいよ?」
なのに、小雪は平気な顔でそんなことを言ってくる。
うーーん……喜んでいいのかなあ。
少し迷ったが結局今日の訓練が始まるまで小雪と2人で休憩所にいることにした私は、休憩所へと続く廊下を歩く。
「沖縄どうだった?やっぱ向こうの軍事都市ってすげーの?」
「そりゃ日本三大軍事都市の1つだからね。最新式の兵器沢山あって面白かったなぁ。戦闘機の操縦もさせてもらっちゃった」
この部隊にも兵器オタクは結構いる。オタクとまではいかなくても、こういう話をする時の小雪は子供みたいな顔をするから好きだ。軍人になったのも戦闘機が好きだったかららしい。