深を知る雨



 《18:00 帰り道》


「いやー、凄かったな、東宮さん!」
「かっこいいわ~」
「Aランクを3人同時に相手するんだもんなぁ」

寮へ帰る隊員達の話に聞き耳を立てながら、私は満足していた。どうやら向こうも成功したようだ。

「そういやあれ大丈夫なのかね?結構な怪我してたけど」
「あー、あの瞬間移動能力者?瞬間移動ってただでさえ難しい能力だもんなー」
「腹に刺さってたぜ。ありゃ暫く訓練にゃ出てこれねぇだろうな」

暫くこっそり隊員達の話に耳を傾けていた私は、そこに泰久の話ではないものがあることに気付く。

……瞬間移動能力者が怪我?

それを聞いた私は、端末を使って上層部しか開けないページを無理矢理開き、日本帝国軍に所属している軍人のデータを見ていく。

瞬間移動能力者は―――小雪しかいない。

「問題ないの一点張りで、ろくに治療も受けずに部屋に戻ったらしい」
「歩けたんだ?すげえな」

小雪の友達は、多分この隊じゃ私しかいない。誰も様子を見には行かないだろう。

部屋に1人戻った小雪の姿を想像してぞっとした。……あの馬鹿、処置くらい受けろよ。何断ってんの。


―――気付けば私は、小雪を避けていたことも忘れて走り出していた。




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