深を知る雨
泰久は雪乃を使ってないらしいし、相手は一也だけってことになるけど……一也も変に壁を作るところがあるから抱くだけ抱いて後は放置っていう様が容易に想像できる。少なくともピロートークなんてしてないだろう。雪乃を抱いた後は背中を向けて寝てそう。……そりゃ居づらいわなぁ。
「ええっと、さっきちょっと聞いたんだけど、雪乃って小雪の妹さんなの?」
とりあえず何か話をして仲良くなりたいと思いそんな質問をしたが、“小雪”という名前を出しただけで雪乃の表情が曇るのが分かった。
……もしかして、兄妹仲悪いのかな?
「兄様のお知り合いですか?」
「おう。オレ、小雪の友達」
「……兄様、友達がいたんですね」
そんな意外そうな言い方やめてあげて?そんなに小雪は一匹狼な印象なの?
妹と知ってから見るとどこか小雪に似ている部分が多くあるように感じられるが、髪の感じだけは似ていない。小雪は天パ入ってるけど、雪乃はストレートだ。
「兄様はお元気ですか?」
まるで暫く会っていない他人のことを聞くみたいな言い方に違和感を覚える。
……そういえば、小雪が家族とはあまり会ってないみたいなことを言ってたような。
同じ軍の施設内にいても、会うことは少ないのかな。
「んー。元気っちゃ元気だけど、昨日結構な怪我はしてたかな」
結構な怪我と言っても女を抱けるくらいの元気はあるみたいだけどね!
「……怪我?」
「あー、うん。ありゃ治るのに時間掛かると思う」
「……兄様がそうおっしゃったんですか?」
「え?」
「怪我して、治らないって」
「小雪が言ってたっていうか、見るからにそんな感じ」
「…そう…ですか」
あまりに不可解そうな表情で俯くものだから、思わず尋ねてしまう。
「何かあるのか?」
「あぁ、いえ……。なかなか治らないような怪我をしたなら、私に言ってくださればいいのにと思って。私、こう見えてCランクレベルの治癒能力を持ってるんです」
Cランクの治癒能力?雪乃が?
「……珍しいな」
変に感じて思わずそう呟いたが、雪乃には聞こえなかったようで小首を傾げられた。
くっ……可愛い!超抱きたい!今私の心のちんこがフル勃起した!!
悶える私の考えていることが大体想像できたのか、隣で呆れ顔をした楓は、雪乃を守るため連行するように私を引きずって方向転換した。
「じゃあ雪乃、あたし達そろそろ戻るからまた今度ね」
「はい」
「じゃあな雪乃!またなー!」
「は、はい」
大きな声を出してブンブン手を振る私に、雪乃は小さく手を振り返してくれた。