深を知る雨

2200.12.22


 《22:00 Cランク寮》


煙たさに窓を開けると、冬の冷たい風が空気が少しばかり部屋に入ってきた。

Cランク寮の一室、小雪の部屋。今夜も私はここにいる。小雪と体を重ねるのも今日で何度目か分からない。女であることがバレた私は、自然と以前のように小雪といることが多くなった。以前のように、ではない。以前以上にだ。夜も一緒にいることが多いのだから。

「今日は泊まってかないの?」

ベッドの上で服を着る私を見て、まだ半裸状態の小雪はお酒を飲みながら不思議そうに聞いてくる。

ヤった後小雪と一緒のベッドで眠って、寝てるかどうかも分からないくらい超遅寝早起きな小雪に朝起こしてもらい、Eランク寮に戻る、というのがここ数日のスタイルだったから、不思議に思うのも無理はない。

「今夜はちょっと、行くところがあって」
「……あいつらんとこ?」
「あいつらって?」
「Aランクの」
「あー、いや、違うよ」

そっちじゃない。これから行くのはSランク寮だ。

そもそもここ数日Aランク寮には行ってない。里緒が何故あの名前を知っていたのか、分かってからじゃないと不安だから。

「ほんとかなあ。哀が取られちゃわないかって俺心配だなあ」
「取られるって……私は誰のものでもないよ」

性行為の後の独特の気怠さと眠気を感じながら立ち上がった。しかし、小雪が邪魔するように私に擦り寄ってくるから歩けない。

「……小雪、酔ってる?」
「んー。酔ってない。ていうか、酔えない」
「お酒強いんだ?」
「まぁねー。酔いたいんだけどなぁ」

クスクス笑いながらちゅっと軽くキスしてくる甘えモード全開の小雪の腕をさりげなく引きはがし、玄関に向かった。小雪は名残惜しそうに付いて来るが、泰久との約束の時刻はもうすぐだ。急がなければ。

「明日の訓練、大掛かりなことするからお昼は結構遅れると思う。哀は先に食べてていいよ」
「あー、そうなんだ?」
「夜は一緒に食べよ」
「……ん」

明日もヤるのか、とその元気さに感心しながら靴を履く。

部屋から出る前に小雪に小さく手を振り、思った。

……今日も目、合わなかったな。



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