深を知る雨



一也はCランクも操れるから、Cランクの小雪に対して私と金輪際関わらないように催眠をかけることだってできるだろう。もし私の相手が小雪だと知って、一也が小雪にそんなことをしたとしたら、私が寂しい。

「へぇ……庇うんですねぇ」

一也がベッドの上に膝を立て、私を押し倒す。油断していた私はいとも簡単に後ろに倒れ、布団の柔らかさを背中に感じた。

「何度達しました?」
「…何でそんなこと聞くの」
「あなたは感じやすいお身体ですからね。新しいお相手となるとお気持ちも高ぶったのでは?ですが、僕にもプライドってものがありましてね。あなたの身体を知って間もない若造に負けるつもりはありません」
「……泰久がいる場所じゃしないんじゃなかったの?」
「泰久様にバレたら困るのは僕だけじゃないでしょう?だから、声は我慢してくださいね」

私を見下ろしながらゆっくりネクタイを外すその仕草が知らない男の人みたいで、私の中に妙な焦りが生まれた。あの一也がその気になってくれているのだからいつもなら喜ぶところだが、さっきまで小雪の相手をしていたから、まだそういう気分になれない。一也のやり方はいつも激しいというか……小雪との行為が同じチーム内でのちょっとふざけ合うこともできる緩い空気の練習試合だとしたら、一也との行為はライバルチームとのガチ試合に近いものがある。

今の状況は、例えるなら夜中まで練習した後休憩無しにライバルチームと試合をさせられそうになっているようなもの。

「落ち着け一也、私の身体がお前の伝家の宝刀を相手にするにはもう少し時間が要る」
「あはは、面白いことを言いますね」

笑ってるのに目が笑ってない一也は、冗談を言ったつもりのない私の服をさっさと脱がし、前戯もクソもなく不意打ちで入ってきた。

痛みに声を上げそうになったが、先程まで小雪の相手をしていた私の中は徐々に一也を受け入れ始め、緩やかな律動を感じ出す。

泰久が入ってきたらどうしよう、とヒヤヒヤしながらドアの方に顔を向ける私の頬を一也がいつになく乱暴に掴んで、私に上を向かせる。冷たい声と共に。

「どこ見てるんですか、集中してください」
「……ッ、……は、……」

一也の動きに息継ぎにも似た声が漏れ、一体何に集中しろと言われているのか分からなくなった。声を抑えることにか、一也の動きにか、与えられる快楽にか。いずれにせよ快楽をゆっくり味わえるような状況ではない。

「は、我慢するのがお上手ですね。そんなに泰久様に気付かれたくないんですか?まぁ、そうでしょうね。自分が男に抱かれている姿なんて、大好きな泰久様には見られたくないでしょうねぇ?」

本当嫌になる。こんなに無理矢理開かれても、身体は刺激に反応するのだ。

目を瞑ると先程の泰久の笑顔が頭に浮かび――何故だか酷く悲しくなった。



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