深を知る雨


 《12:50 食堂》


………はあ。朝はちょっと言い過ぎたかなぁ。泰久のこと好きにならなきゃよかった、なんて思ってもないこと言っちゃった。

泰久を好きになって得られたことだって沢山あるのについカッとなってしまった。

席に座ってロボットが運んで来てくれたサンドイッチをむしゃむしゃ食べていると、

「お前、1人でそんだけ食うんか」

頭上で呆れたような声がした。振り返ると、私の座る椅子のすぐ後ろに遊がいる。何でここに……。

元々大食いということもあるが、今日こんなに頼んだのはやけ食いするためだ。勢いで初めての告白をしちゃったこととか、すぐ振られたこととか、泰久の態度に怒っちゃったこととか……食べて全部忘れたい。

「珍しいな。遊って食堂来るんだ」
「普段は来うへんけど、お前に話があってな。向こう行けへんか?」

“向こう”がどこを指しているのか分からないが、とりあえずは食堂の外だろう。遊はあまり食堂を好きじゃないのが表情から分かる。この時間帯は沢山人が集まってうるさいからかもしれない。私としてもこんなに人がいる中でAランクと喋って目立ちたくはない。今はまだ、目立っていい時期じゃない。

「……分かった」

それに、遊が私に話があるというのだから余程のことだろう。

何を言われるのか予想もつかないまま、席から立ち上がった。




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