深を知る雨
「…変なこと聞くけど。楓ってさ、何でAランクの性欲処理係しようと思ったの?」
楓は多分私と同じタイプの人間だから、単にそういう行為が好きだからとか、そういう答えが返ってくるものだと思っていた。
「薫がいたから」
しかし、楓の返答は私の予想していたものとは違った。
「……え?性欲処理係になる前から薫と知り合いなの?」
「薫のこと軍に招いたのはあたし。薫と薫のお兄さんを父親に紹介したのはあたしなのよ」
薫のお兄さん……確か、楓が恩人だとか言ってたっけ。
「敗戦後超能力部隊が女性禁制になって、薫の傍にいるには性欲処理係になるくらいしか方法がなかった。それに男と体を重ねることも嫌いじゃないしね」
「……」
「何よその顔」
「薫のこと大事なんだなーって」
「恩人の弟だって言ったじゃない」
「……ほんとにそれだけ?」
「……それだけじゃ、ないわね」
「えっ」
「私、薫のお兄さんのこと好きだったの。男性として」
もしかしたら薫にも多少は望みがあるんじゃ……と期待して聞いてみたが、これまた予想とは違う答えだ。
「だから、ただ恩人だからってわけじゃない」
「……」
「恩人の弟であり、好きな人の弟でもあるから、大切にしたいの」
薫も―――私と同じか。叶わない恋をしている。
ドンマイ薫!遊!こりゃ相当頑張らないと楓は振り向かないぞ?
……でも、叶ってほしいねえ。薫や遊が頑張ったら。どちらかが恋を成就させたら。…私も希望を持てる気がする。