深を知る雨
火災の際に機能するシステムを無理矢理動かそうとしたが、侵入できるネットワークが無かった。
……通信を遮断した?こっちが電脳能力者っていう可能性を考慮しての行動か。
仕方なく外部のネットワークを利用しようと試みるが、いつものようにうまくいかない。
……妨害電波の類かな。それもかなり強力だ。
この状態で外にある物を利用するなら体力と集中が必要だ。
今はエフィジオの攻撃から逃げるだけで精一杯だし、一旦エフィジオを引き離さないと勝ち目は無い。……やってくれるじゃん。
この短時間で誰がこんな処理を―――ああ、さっき瞬間移動で飛んでいったルフィーノか。やっぱり逃げたわけじゃなかったんだ。
襲ってくる火から逃げながら、とりあえず建物から出ることだけを考える。
この建物のマップはさっき頭に入れた。
私の走る方向にある出口は1つ。
挟み打ちされるのは避けたいが、何分選択肢がない。
と。
炎が凄い勢いでこちらへ近付いてきた。
さっきまである程度は手加減してた感じだったのに、今度は本気で殺しにかかってきてるのが分かる。
こんな威力、Dランクレベルの防御能力で防げるわけがない。やむを得ず接着能力を使って壁の高い部分まで登り、火から逃れる。
ああクソ、この能力は誰の前でも使わないつもりだったのに。
エフィジオは壁に張り付く私を見上げ、クスクス笑って目を細めた。
「へぇ、接着能力ね~。自分しか接着させられないってことはDランク程度かしら?それにさっきアタシの火を防いだのは防御能力?こっちもDランクくらいね。非力な能力でも合わせ持つと役に立つのね~勉強になったわぁ」
接着能力も防御能力もマイナーなものなのに、この動きだけでそこまで予想されるとは……。
「でも接着能力に関してはDランクにしては強度がありすぎね。Cランク以上となると複数能力を持ってるのはおかしいしぃ……アンタほんとに何者なのかしらぁ?」
この機会を利用して探ってやるつもりが、逆にこっちが探られてる。
この展開はまずい。これ以上何かバレる前にこの建物を出なければ。
大丈夫、もうすぐ出口だ。
この角を曲がれば広い空間が広がっていて、左側の通路へ行けば出口がある。
走って角を曲がった時、私は思わず立ち止まった。
――――…何も無い一本道…!?