あいつが死んだおかげで
高校生活も残りわずかとなり、スケジュールが書いてあるうしろの黒板には卒業式までのカウントダウンが書かれていた。
一時間目から四時間目までなんの授業だったのか覚えていない。
俺は葬式の時に見せた友瀬のあの顔と汗が気になった。
あいつも、何か隠している。
何が友情だと心の中でせせら笑った。
友瀬も、内海に後めたいことがあるんだ。
それ以外にない。あんな後悔したような思いつめたような表情は何かあるに違いなかった。
お昼休憩に入り、花が生けてある内海の席で、俺は友瀬と机を囲って弁当を広げた。
いつもは内海のおかげで弾んでいた会話も、冷め切った夫婦のように何もない。葬式が終わってからも、友瀬はすぐに帰ってしまったのだ。
彼は元から物静かで控えめで、どちらかと言うと無口なタイプだ。内海とは小学生の頃から一緒だが、友瀬は高校の時に親友になった。
それも内海からの紹介で仲良くなったのもあるのか、こうして二人きりで会話することは少なかった。
ここは思い切って話をしてみよう。
もしかしたら、葬式の時の話をしてくれるかもしれない。
俺は勇気を出して、笑いながら話をする。
「やっぱ……内海がいないと静かだよな。なんか盛り上がらないっていうか」
友瀬はそれに対して何も言わずに弁当のおかずを食べている。なんだよ、無視することないだろう。
それに対して文句を言おうとした時、友瀬が眼鏡を掛け直しながら口を開いた。
「悠。△△大学合格したんだろ?」
今それは、俺にとって突き刺さる言葉だ。
「おめでとう」
友瀬はいつものようにクールに祝福の言葉を言う。
彼にとって悪気はない。ただ祝福しただけ。
当たり前だ。
彼はあのことを知らないのだから。
俺は食欲を無くし、スプーンをおく。そして小さく呟いた。
「あ、ありがとう……」