あいつが死んだおかげで
刑事はさらに身を乗り出して話をする。
「君のもう一人の友達の友瀬賢志。彼が内海大樹くんが倒れたときの第一発見者なんだよ」
俺は反射的に答えた。
「友瀬がやったって言いたいんですか? 友瀬と内海は友達です。親友です! 突き飛ばすわけがない」
次は若めの刑事が口を開いた。
「他の人の話では、内海君が階段から落ちる前、誰かと喧嘩しているような声が聞こえたって言っているんだ」
まさか、まさか友瀬が?
この時俺は、何が友情だと叫ぶのを堪えた。
「友瀬君にはこの後で話にいこうと思っているんだよ。そんなことよりも」
刑事二人の顔が一気に険しくなる。
本題はここからのようだ。
「君たち二人。内海君の葬式ではなんだか様子が変だったよね」
「変? 変って……?」
葬式で聞いた鈴の音が頭に響いた。
「親友だって言うのに涙一滴どころか二人とも変に俯いて汗を流していたよね。我々は思うんだよ。君たちが何か隠しているってね。二人で話し合って、内海君を階段から突き飛ばしたんじゃないかって思っているんだ。思っているだけだよ? 君の意見が聞きたいんだ、悠君」
たしかに、俺は隠している。
罪深いことを言った。
死ねって言って、本当に死んだんだ。
まるで自分が殺してしまったかのように。
それを誤魔化そうとして泣くのを忘れた。
だからと言って、突き飛ばしてはいない。
なら、友瀬は?
友瀬のあの顔は……? あの汗は……?
「行かなきゃ……!」
俺は勢いよく居間を飛び出した。
母さんが俺を呼んでいた。聞いたことがないくらい大きな声で。
俺は無視して靴も履かずに友瀬の家まで全力で走った。
走っている最中、内海の机に飾っていた大輪の百合の花を思い出した。
あれは毎日友瀬が花瓶の水を取り替えていた。
友瀬。お前はどういう気持ちで花瓶の水を変えていたんだ。
一体、何があったんだよ!