あいつが死んだおかげで

 日が次第に沈み、はらはらと雪が降ってきた。
 公園に入ってショートカットをしようとすると、そこには友瀬が、ブランコに座って目を瞑っていた。

「友瀬!!」

 俺は友瀬の胸ぐらに掴みかかる。

「殺したのか! なんで! 内海の何が憎かったんだよこの人殺し!」
「お前に俺の何がわかる!」

 友瀬は胸ぐらを掴んでいる俺の両腕を強く掴んだ。

「大樹が死んだから追加で合格したお前に言われたくない! 内心喜んでいるんだろう!? アイツが死んだおかげで大学に行けるんだからな! この卑しいやつめ!」
「なんだと……!」

 俺は怒りのままに友瀬を押し倒し、その上に乗っかって殴りかかろうとした。

 すると、友瀬が大きく叫んだ。


「俺は、大樹が好きだった……!」


 え。
 俺は殴る直前で体の動きを止めた。


「愛しいほどに。憎いほどに。アイツが好きだったんだ」


 友瀬は説明した。
 あの日の夕方に、内海に好きだと告白して拒絶されたこと。それが許せなくて、階段から突き飛ばしたことを。


「そして大樹は、お前が好きだったんだ」


 心の中で雪が吹き荒んだ。


「内海大樹は、お前にずっと恋していたんだよ」


 俺は友瀬から離れてふらふらと後ずさり、膝から崩れ落ちた。

 友瀬は公園の入り口に立っている二人の刑事を見た。

「安心しろ。俺は自首するつもりだ」

 彼は俺を一瞥した後、刑事とともに公園を出た。
 俺はしばらく公園でうずくまって、雪の冷たさを感じた。

 俺はずっと彼は友達だと思っていて、でもあの二人は友情だと思っていなくて。
 俺は、俺のことが好きな彼に死ねって言っていて。

 何が友情だ。

 結局友情だと思っていたのは、自分だけだったのだ。

 彼らはもう、二度と俺のところに戻ってこない。

 すれ違ったまま、彼らに何も言えないまま、俺はこの降り積もる雪に埋もれていくだけだ。

 雪はヒューヒューと音を立てながら、俺の体に降り積もっていった。


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