闇は光を閉じ込めて愛したい。
「名前も年齢も、昨日のことも思い出せない……とすると、お前記憶喪失か?」


記憶喪失って言葉とかが理解できなくなるようなものじゃないのかなとは思いつつも、名前も年齢も思い出せないのできっとそうなのだろう。


頷いた。


「じゃあ、お前の名前は“深紅(くれなゐ)”にしようか」


私の手からスマホを取った男は


(はなだ) 深紅(くれなゐ)


と書いて渡してきた。


(はなだ)深紅(しんく)も色の名前。


深紅(しんく)をくれなゐって読むのかっこいいなぁ。


きっとこの男は色が好きなんだろうなと考えてしまう。


そういえば、この男の名前は何なんだろう。


『あなたの名前は?』


そう打ち込んで渡す。


すると男は困ったように、だけど悲しそうに


夜宵(やよい)


と言った。
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