みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
1 新生活


「わー!なつかしいっ!」

 改札を出て駅前に降り立つと、小さな頃の記憶がばーっと脳内をかけめぐった。

「あのパン屋さんはメロンパンがすっごくおいしいところ!あ、あそこのお花屋さんでお母さんにおくるカーネーション買ったなぁ。あ、雑貨屋さんもよく行ったっけ!」

 小さな頃に住んでいたこの街は、変わったところももちろんあるけれど、変わらないものもたくさんあって、私はうれしさでいっぱいになる。

 私、花宮(はなみや) ちとせ、中学二年生。

 この春から、小さな頃に住んでいたこの街の学校に通うことになったんだ。

 しかもその学校はすっごく大きな学校で、寮生活なんだって!

 お父さんお母さんと離れて暮らすのは少しさびしいけれど、寮生活、って響きにもドキドキしてる。

 なんでもひとりでやらなくちゃいけないから、不安に思うこともあるけれど、家でもお母さんのお手伝いはしていたし、きっと大丈夫だよね!

「そうだ、ケーキ屋さん…!」

 よく買いに行っていたケーキ屋さん。

 住宅街の中にひっそりとある、小さなお店ではあったけれど、そこのケーキがものすごくおいしかったの。

 お誕生日はかならずそのケーキ屋さんでホールケーキを買ってもらってたんだ。

 かわいいケーキがたくさんあって、プリンやスイートポテトなんかもすごくおいしかった!

「まだ間に合う、よね!」

 今日は転入初日。

 けれどまだ始業には時間があるし、間に合うはず。

「よしっ!ケーキ屋さんに寄ってみよう!」
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