みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

 ぐ~っと談話室に大きな音が響いた。

 みんなの視線が一気に雪城先輩に集まる。

「ごめん、僕お腹空いちゃった。澪、晩ご飯にしてくれる?」

「はいはい」

 なおもソファでだらだらしている雪城先輩にうながされて、藤川くんは談話室を出て行く。

 私もあわててその後ろを追った。

「藤川くん!」

「なに?」

 私は藤川くんにもしっかりとお礼を伝えた。

「本当にありがとう!素敵なところに住まわせてくれて。すっごく助かりました!」

「別に。どうせ部屋も余ってるし。ただまぁ、男子しかいないから、だらしないことも多いと思う」

「うん!家事は一通りできると思うから、できることはもちろんやるつもり!」

「そうか、それは助かる」

「ところで、ご飯はいつも藤川くんが用意してるの?」

「そうだけど?」

「そうなんだ!すごいね!」

 藤川くん料理得意なんだ!

「私も手伝うよ!」

「え?」

「本当はケーキ作りの方が得意なんだけど、それなりにご飯も作れるよ!」

 えっへんと胸を張ると、藤川くんはふっと優しく微笑んだ。

「頼もしいな」

 藤川くんが笑った…!

 学園内ではいつもどこかめんどうくさそうで、クールな表情ばかり見ていた。

 藤川くんの笑顔を見たのは、それがはじめてだった。

「キッチンはこっち」

「あ、うん!」

 その日は藤川くんといっしょにご飯を作った。


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