みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

 これから学校があるから、もちろん買うことはできないけれど、大好きだったケーキ屋さんを一目でも見たくて、私は記憶を頼りに歩き出した。

 辺りをきょろきょろと見回しながら、私は明るい色の屋根を探す。

 赤色の屋根に、ケーキのイラストの旗が立った小さなお店。

「おかしいな…たしかこの辺りのはずなんだけど…」

 掲示板のある角を曲がったらすぐに赤い屋根が見えていたはず、なんだけれど…。

 そこには文字通り、なにもなかった。

 お店どころか、建物すらなくて、まっさらな土地があるだけだった。

「道、間違えちゃったかな…?」

 途方に暮れていると、たまたま同い年くらいの制服の男の子が通りかかった。

 私はその子に声をかけてみた。

「あの、この辺にケーキ屋さんってありませんでしたか?」

 振り返った男の子の姿に、私ははっとした。

 うわぁ、ものすごくかっこいい子だ…!

 切れ長の目元に、整った顔立ち、藤色の瞳がきらりと光った気がした。

 宇宙みたい。

 男の子の瞳を見て、私はそう思った。

「ケーキ屋さん?」

 男の子に聞き返されて、私はあわてて補足する。
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