みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

 焼き上がったパウンドケーキに生クリームを添えて、談話室に戻ると、本を読む藤川くんと、一生懸命机に向かう椿くんの姿があった。

「ふたりもよかったら食べる?」

 そう声をかけると、藤川くんの目がまたかがやいたような気がした。

 見間違い、じゃないよね?

 椿くんはびくびくと縮こまるように肩を揺らした。

「食べる」と即答する藤川くんと、「じゃあもらおうかな…」と小さくつぶやく椿くんの前にパウンドケーキを置く。

「いただきまーす」

 3人で手を合わせてパウンドケーキをつつく。

 ふわっとしたパウンドケーキに少しの生クリームを付けて口に運ぶと、優しい甘みが広がった。

「ん!おいしい!」

 いい調理器具や、オーブンのおかげなのかな。それとも、お友達といっしょに食べるからかな。

 実家で作るよりもなんだかおいしく感じられた。

「うまいな」

 藤川くんもそう褒めてくれる。

「ありがとう!実はケーキ作りが趣味でして」

「知ってる。今朝聞いたよ」

 そうだった、藤川くんとはケーキ屋さんがあった場所で出会って、私がそのケーキ屋さんにあこがれていることを話したんだった。

 椿くんはなにも言わなかったけれど、さっきよりも表情がやわらかくなっているような気がするから、もしかしたら口に合ったのかも。
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