みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

「あ、うん!そうなの。この辺りにケーキ屋さんないかな?たしかこの辺だったと思うんだけど…」

 私の言葉に、なぜだか表情がけわしくなってしまう男の子。

「そのケーキ屋さんになにか用?」

「大好きなケーキ屋さんなんだ!私、久しぶりにこの街に帰ってきたの。それで小さい頃に大好きだったケーキ屋さんを見たくて。実はね、私、そのケーキ屋さんのおかげで、私も将来ケーキ屋さんになりたいなって、夢を持てたんだ!」

 見た目もすごくかわいくて、甘くておいしいケーキ。

 テストでうまくいかなかった日も、友達とけんかしちゃった日も、大好きなケーキ屋さんのケーキを食べれば元気がわいてきた。

 また勉強がんばろう!ちゃんとあやまって仲直りしよう!

 そんな風に元気や勇気を与えてくれるケーキ屋さんのケーキが、いつしか私のあこがれになっていたんだ。

 私もこんなふうにだれかの元気につながるケーキを作ってみたい。

「あ、ごめんね!私のことまでしゃべっちゃって!それくらい大好きなケーキ屋さんだったんだ。だから、どうしてもまた行きたくて」

「……ないよ」

「え?」

 男の子は私の言葉が言い終わらないうちにそう答えた。

「ケーキ屋さん、なくなったんだ」

「え…」

 ぽかんとする私に、彼はもう一度言った。

「ケーキ屋さんつぶれたんだ。まぁ、もうだめそうだとは思ってたけど」

 男の子のあまりに冷え切った声に、私はやっぱりぽかんとするしかなかった。
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