みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
6 陸上部の王子様
ちょっと変わった男の子たちと寮生活をはじめて数日。
いつものようにみんなで朝食をとっていたときのことだった。
「あ、ごめんね」
私がトーストに塗るためのブルーベリージャムに手を伸ばすと、同じようにブルーベリージャムを取ろうとした、椿くんと手がぶつかった。
「ひぃっ!?」
椿くんは驚いてあわてて手を引っこめた。
「え…」
「花宮、祐希は女子が苦手なんだ。気を悪くしないでくれ」
藤川くんにそう言われて、私は思い出す。
そうだったそうだった。
椿くんは女の子が苦手なんだった。
学園では陸上部のエースで、人当たりもよくて爽やかで、いつも男女問わず囲まれている。
けれど本当のところは女の子がすっごく苦手なんだって。
廊下で椿くんとすれちがうときは、いつも明るくあいさつをしてくれるけど、寮ではほとんど話したことがなかった。
「椿くん、ごめんね。気をつけるね」
もう一度謝って、私はブルーベリージャムを椿くんの方へと置いた。
椿くんは私と目を合わせずに、小さくつぶやく。
「あ、いや…こっちこそごめん」
学園での椿くんのようすからは信じられないほど静かだ。
どうしてそんなに女の子が苦手なのか、少し気にはなるけれど…。
だれにだって苦手なものくらいある。
とにかく椿くんが嫌な思いをしないように気をつけなきゃ。