みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
「迷惑かけてごめん…」
「え?」
椿くんは目を伏せて話し出す。
「俺のせいで気をつかわせちゃってることも多いんじゃないかな、って。俺が女子苦手なせいで…」
「そんなことないよ!私こそ、急にいっしょに住むことになっちゃって…。椿くんからしたら、女の子がそばにいるだけでしんどいよね?」
「あ、いや…そういうわけじゃ…」
椿くんは困ったように視線をさまよわせる。
そうしてぽつりぽつりと椿くんは話しはじめた。
「…俺、姉さんが3人いるんだ」
「お姉さん?」
「うん、俺が末っ子で、男は俺ひとりで。姉さんたちに散々いじめられたんだ。小さい頃は女の子の服ばかり着せられて、お人形みたいに扱われて。しかもおそろいコーデとか言って、外でもひらひらした服着せられるんだぜ?どうかしてるよ…」
椿くんがひらひらなお洋服を着て、お姉さんたちと並んで歩くのを想像してしまった。
「近所に住む幼なじみまで、椿ちゃん、とか言ってからかってくるし、もう最悪だよ…」
椿くんは拳をぎゅっと握りしめる。
「だからこの学園に入ったんだ。姉さんや幼なじみがそばにいなければ、俺は俺で男らしくいられると思ったから。…でも、実際は違った」
「え?」
「知らないうちに、女子が苦手になってたんだ。学園に入学して気がついた。女子とうまく話せなくなってたんだ…」
「そんな…」
「でも、そんなのかっこ悪いだろ?だから俺は勉強した。男らしくふるまえるように、少女漫画を読んで!」
ん……?
「しょ、少女漫画…?」
「そう!少女漫画にはかっこいい男がたくさん出てくるだろ?好きな女の子を守るかっこいい男!姉さんたちもいつも読んでたし、男らしくてかっこいいって、いつも言ってたんだ」
「うん?そうだね?」
「だから少女漫画を読んで勉強したんだ。…参考にしてそんなふうに振る舞ってたら、まぁ、なんか知らないうちに陸上部の王子様とか勝手に言われてたけど……」