みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

 なるほど、そういうことだったんだ。

「椿くんの理想の自分なんだね」

「まぁ、そう、なのかな…?」

「本当は女の子を苦手に思っていても、かっこいい自分になれているのなら、それでいいんじゃないの?」

「…まぁ、そりゃあそれでいいのかもだけど。根本的には変わってなくね?ずっと女子が苦手なままじゃん…。どうしたら克服できるのかもわからないし。こんなのかっこ悪いだろ…」

 椿くんはえらいなぁ。自分の苦手なものを、克服したいんだ。

 うーん…、なにか私にできることはないかなぁ…。

 少しの間考えて、私は簡単なことに気がついた。

「それなら、私と友達になる、っていうのはどうかな?」

「へ?」

 私の提案にきょとんとする椿くん。

「私で女の子に慣れていく、っていうのはどうかなって思ったの。私なら、椿くんの本当の気持ちも知っているし、寮なら気をつかわなくてもいいと思うし。どうかな?」

「…たしかに、花宮さんなら、今更隠す必要もないけど……」

「それに椿くん、なんだかんだ言って、私とふつうに話せてるよ」

「えっ……そ、そうかな…」

「そうだよ!そんなに深く考えなくても、少しずつ慣れていけるんじゃないかな?私といっしょにがんばってみようよ」

 私の提案に、椿くんはうーんと少しの間悩んでいたけれど、覚悟を決めたようにこくんとうなずいた。

「わかった…お願いします…」

 椿くんは不安そうにしていたけれど、「がんばろう!」と私が明るく声をかけるとようやく少し笑ってくれた。

「で、まずなにからしたらいいんだろ?」

 女の子とふつうに友達になるなら…かぁ…。

「名前で呼び合ってみるとか?」

「えっ!」

「雪城先輩も私のこと名前で呼んでるし、椿くんが嫌じゃなかったら!」

「い、嫌では、ないけど……」

 椿くんは恥ずかしそうに視線をさまよわせてから、ゆっくりと私を見た。

「……ち、…ちとせ」

「うん!祐希くん!女の子克服の第一歩だね」

 祐希くんは照れくさそうに笑った。

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