みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
雪城先輩は生徒会に、祐希くんは陸上部の朝練に行ってしまって、兎山くんは登校まで少し作業するとのことだったので、朝ごはんの片付けはいつも通り私と藤川くんが担当した。
お皿を洗いながら、私はさっきのにぎやかなみんなを思い浮かべる。
「寮って楽しいね」
「そうか?あいつらはちょっとうるさいと思うけど」
藤川くんが呆れたようにため息をつく。
「そんなことないよ、にぎやかで楽しいよ!うちはお父さんお母さんが仕事で忙しくて、朝はいっしょにゆっくり食べられなかったから、みんなでこうやってご飯を食べられるのがうれしいんだ」
「……あっそ」と素っ気なく返す藤川くんだけど、なんだかんだ藤川くんは世話焼きさんなんじゃないかな、って思うんだ。
こうやって朝ごはんの支度とか、片付けとか、みんなのことちゃんと見てるし。
藤川くんに直接言ったら、眉間にしわを寄せて否定してきそうだから、こっそり思うだけにしておくけどね。
「ところで、」
「ん?」
お皿を拭いて戸棚に片付けていると、藤川くんが口を開いた。
「いつから名前呼び?」
「え?」
「祐希のこと。ついこの前まで椿くんって呼んでただろ」
「ああ!そのことね」
そういえばさっき雪城先輩にも訊かれて、話が途中になっちゃったんだっけ。
私はざっくり祐希くんと女の子の克服練習をしていることを、藤川くんに伝えた。
話を聞き終わった藤川くんは、驚いたような表情を見せた。
「祐希のやつ、よく克服しようなんて思ったな」
「もともとどうにかしたいと思ってたみたいだったよ」
「ふーん…」