みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい

 いつもクールではあるけれど、今日の藤川くんはなんだかやたらと素っ気ない感じがする。

 機嫌悪い…?

 私、なにかしちゃったのかなぁ…と思いながら食器棚にお皿を戻す。

 すると。

「ちとせ」

「え?」

 名前を呼ばれて振り返ると、藤川くんが真正面に立っていて、食器棚に手をかけた。

 そのあまりの近さに、心臓が不規則に動き出す。

「俺も名前で呼んでいい?」

 真剣な瞳が間近にあって、私は息をのんだ。

 すぐには言葉が出てこなくて、こくこくと首を縦に振ることしかできない。

 私の返事に、少し表情をやわらかくする藤川くん。

「俺のことも、澪って呼んでくれていいから」

「う、うん…」

 そう言ってキッチンを出て行ってしまった。

「び、びっくりしたぁ…」

 まだドキドキとうるさい胸に手を当てて、ゆっくり深呼吸をした。

「澪…くん…」

 どうしてだろう?ドキドキの中になにか、なにか引っかかるような気がしたような…?

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