みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
「ちとせってすごいよなぁ。自分の夢にも、他人のことにも全力でさ。俺なんかの女子克服の手伝いまでしてくれるし。それに比べて俺は、がんばれてんのかな…?」
「祐希くんはがんばってるよ!」
「え?」
「男らしく、かっこいい自分になりたくて、自分を変えようって、苦手な女の子を克服しようとがんばってる!それってすごいことだよ!」
私の言葉に「そうかなぁ?」と首をかしげる祐希くん。
「すごいことだよ!苦手なものに立ち向かうって、すっごく勇気のいることだと思う!それなのにめげずに立ち向かえるって、すごくかっこいいし、すごいことなんだよ!」
例えば、走ることが苦手だったとして、その苦手なことに真剣に取り組んで、苦手を克服しようとがんばれるひとって、どのくらいいるんだろう?
私だって苦手なものがたくさんある。
ピーマンが好きになれないし、数学だって少し苦手意識があるんだ。
でもそれをなんとか克服できるようにがんばろうって力はなかなかわいてこない。
それだけで祐希くんはすごいひとなんだ。
祐希くんは少し照れくさそうに頬をかいた。
「がんばってる祐希くんにこんなこというのも変なんだけど…」
「うん?」
「本当はね、祐希くんは祐希くんのままでいいと思うんだ」
「え…」
「学園での王子様な姿だって祐希くんだし、本当は女の子が苦手な祐希くんだって祐希くん。男らしくならなきゃって思ってるのかもしれないけど、私は祐希くんは祐希くんらしくでいいと思うんだ。ありのままの祐希くんで」
「ちとせ…」
「もちろん、なりたい姿があるっていうのも良いことだと思うけどね!」
私がそう笑いかけると、祐希くんもにかっと笑い返してくれた。
その笑顔は、いつもの学園での爽やかな笑顔よりも、もっと爽やかですてきな笑顔だった。