みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
9 美術部の王子様


「よしっ!こんなものかな!」

 フルーツをいっぱい乗せたタルトが食べたくて、その日も私はキッチンを借りてケーキを作っていた。

 するとそこへめずらしい人物がやってきた。

「なにしてるの?」

 小脇にスケッチブックを抱えた、兎山くんだった。

「あ、兎山くん!今ね、フルーツもりもりのタルトが作りたくて、生地を作ってたところなの!」

 キッチンに入ってきた兎山くんは、私の手元をのぞきこむ。

「ふーん、あんた本当にケーキ作るの好きだね」

「うん!大好き!」

 私の返答に、なぜか驚いたように目を丸くする兎山くん。

「…料理してるところ、スケッチしてもいい?」

 兎山くんは鉛筆を片手に、スケッチブックを広げる。

 さすが美術部の王子様!

 いつも絵を描いているし、数あるコンクールを総なめしているだけあって、すごく勉強熱心なんだ。すごいなぁ。

 私は感心しながらも、快くうなずいた。

「もちろん!あ、…」

 返事をして気がついたけれど、今日は…。

「ごめん、兎山くん…。実はね、今日はここまでなんだ」

「え、そうなの?」
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