みんなだまされてますっ!~イケメン達の裏の顔はめんどくさい
10 私がモデル?
「僕、漫画描いてるの。将来、漫画家になりたいから」
兎山くんの言葉に、私は目をかがやかせた。
「漫画!?すごい!すごいよ兎山くん!!」
私の反応に、なぜかおどろいたように目を丸くする兎山くん。
「え、馬鹿にしたりしないの?」
「え?どうして?なんでそんなことするの?」
今度は私が目を丸くする番だった。
「だって、僕って絵の天才なんだよ?絵画の道に進むってだれしもが思ってるじゃん。お父さんもお母さんも、それをぼくに期待してる。それなのに漫画描いてるなんて言ったら、みんなおかしいと思うでしょ?」
「どうしてひとの夢をおかしいなんて思うの?やりたいことや好きなことがあるってすてきなことだよ!漫画家かっこいいじゃん!兎山くんなら絵も上手だし、ぜったいになれるよ!」
兎山くんは目をぱちぱちと瞬かせて、ふいっと私から視線を外した。
「あんた、…ちょっと変なんじゃない?」
「ええっ!」
たしかに前も澪くんに変わってるって言われたことがあったけれど、私、なにか変なこと言ったかなぁ…?
「まぁいいや。このことはみんなには内緒にして」
「どうして?こんなにすてきな漫画になってるのに」
床に落ちていた一枚の紙を拾い上げると、そこには漫画の世界が広がっている。
コマの中にはかわいらしい登場人物たちがいた。
それを乱暴に私の手から奪い取る兎山くん。
「なんでも!とにかく、これはぼくと花宮先輩の二人だけの秘密だからね!!」
「わ、わかった」
雪城先輩も祐希くんも澪くんも。きっと兎山くんが漫画を描いていると知ったら、すごく喜んで読みたい!って言うと思うんだけどなぁ…。
でも兎山くんが秘密にしてほしいって言うんだから、だれにも言わないようにしなくちゃ。