神殺しのクロノスタシス1
「文明の利器は有効だと思うよ。テレビの報道だと、どうしてもその国の中のニュースに偏ってしまうからね」

世界は広い。

一つの時空の中でも、色んな国が集まって、色んな人々が生活しているのであって。

そこで起きている殺人事件を全て網羅しようと思ったら…やっぱり、ネットで調べるのが手っ取り早い。

「理屈は分かるけど…。でもネットで調べられる情報は、あくまで警察が把握してる殺人事件だけだろ?」

「まぁ、そうだね」

「司法の手が及ばないような未開の地で事件起こしてたら、分かんないじゃん」

…うん。

例えば原住民だけが住んでいて、外界との関わりが全くないような部族に、犯人が潜り込んで。

そこで女の子を殺していたとしたら…。

ネットでいくら調べても、分かるはずがない。

「しかも…こんな物騒なこと調べてたら、とんでもない変態が出てくる。ほら…見ろよ、この書き込み。『幼女の死体の胸をペロペロしたい』だって。きもっ。シルナかよ」

「私、女の子の死体を舐めたいなんて一度も言ったことないよね?」

濡れ衣やめて。濡れ衣。

世の中には…色んな性癖の人がいるってことなんだろう。

それにしても、幼女で、死体で、しかも胸を舐めたいとは。

アブノーマルにもほどがある。

「こいつが犯人なんじゃねぇの?こいつ捕まえに行こうぜ」

「いや…。ネットの掲示板に書いてあるようなことだから…」

しかも、匿名掲示板。

本当にそんな趣味がなくても、いくらでも勝手なことを言えるよね。

「それより、見つからない?女児の連続殺人事件が起きてるってニュース…」

「ない。見つからない」

溜め息をつく羽久。

うーん…やっぱり見つからないかぁ。

「女の子の行方不明事件は?」

「単発ならいくつか…。でも、連続ではない」

ポテトを齧りながら、パソコンの画面を見る。

そこには、世界各地で起きている女児の行方不明事件リスト。

たくさんあるけれど、どれも事件が起きている国、人種、日時、全てがバラバラ。

共通性は見つけられなかった。

遺体で発見されたケースもあれば、数日で見つかったケースもある。

「見つかったケースは置いておいて、殺された、あるいは見つからないまま未解決で終わってるケースだけピックアップすると…こんな感じ」

「うーん…。それでもバラバラだね」

色んな国で、色んな時代に起きてる。

これらが、私達の追ってる犯人の仕業であると結論付ける根拠は、何もない。

「犯人が捕まってるケースを除外すると?」

「犯人が捕まってない事件は…えぇと…。これとこれと…」

更に絞り込みをするが。

「…うーん…」

やっぱり共通性が見つからない。

「…殺害方法が、ルーデュニアで起きた事件と同じだとしたら…。やっぱり、遺体から心臓をくり抜かれてると思うんだけど…。そこまで分かる?」

「さぁ…。当然だけど、このパソコンじゃ一般に公開されてる情報しか拾えないからね」

「詳しい殺害方法が丁寧に記載されてる訳じゃないから、分からない…か」

いっそ、警察庁のパソコンとか…ハッキングするべきかな?

そこまではしたくないんだよなぁ…。

必要とあれば、やむを得ないんだけど…。
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