神殺しのクロノスタシス1
「…うーん…」

分かることを並べてみたのは良いものの。

ただ事実を並べただけで、結局そこに至った理由が何も分からないんだから。

何も分かってないのと同義だよなぁ。

「もううんざりしてきた。せめてネカフェはもう勘弁…いや、シルナと同室は勘弁したい。別室借りたい」

「私が悪いみたいに言わないで」

八つ当たりでしょそれ。

…よし、仕方ない。

「こうなったら…羽久。最終手段だ」

「あ?何?」

「警察庁に忍び込んで、捜査の進捗状況を確認しに行こう」

「…」

羽久は、真顔でじっと私の顔を見つめた。

しばし無言で見つめ合った後、羽久はくるりと後ろを振り向き。

「…あ、もしもし認知症外来ですか?予約お願いします。ちょっとうちのお爺さん、ボケが酷くなってて…」

「認知症じゃないから。正気だから!電話しないで!」

大体、何処に電話してるのさ君。

勝手に予約取らないで。行かないから。

「警察に忍び込むって…何考えてるんだよ」

「何って言われても…。もうそうするしかないかなって」

「そりゃ確かに…一理あるけど…」

この事件は恐らく、私達が思っている以上に根が深い。

世間に報道されていないだけで、警察だけが抱えてる情報もきっとあるだろう。

だから、それを調べに行く。

「…これ以上、ネットで真偽の分からない落書きを漁っても意味がない、か…」

「そういうこと。ね?行ってみよう」

「…後で、イーニシュフェルト魔導学院の生徒に噂流しとこ。学院長が警察に忍び込んでたって」

「やめて生徒には言わないで!」

良い子に育ててるんだから!学院長がこんな悪いことしてると知ったら、皆悪い子になっちゃう。

警察にこっそり潜入なんて、教育者としてあるまじき犯罪だが…。

今回ばかりは、目を瞑って頂きたい。
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