神殺しのクロノスタシス1
「ってかさ、犯人はいつになったら捕まるんだよ?」
「さぁ…」
誰もが、そのことを考えているだろう。
犯人はいつになったら捕まるんだ。
警察は一体何をやってるんだと。
なかなか犯人の特定に至らないせいで、警察は随分と叩かれていた。
「ったく、こんなときの為にいるんだからよ。ちゃんと仕事して欲しいぜ」
やれやれ、と呆れるC君。
警察の名誉の為に言っておくが、犯人が捕まらないのは、警察の不手際ではない。
俺が、ほとんど証拠を残していないからだ。
俺はもう、何年も何百年も、同じ犯罪を繰り返し続けている。
何が証拠になるのかは、身を以て熟知している。
だから、そう簡単に捕まるつもりはない。
同じ世界で捕まるまで殺し続ける。
バレずに同じ世界で殺し続けた人数の最高記録は…軽く三桁を越えている。
俺ほどたくさんの少女を殺した人物も珍しいだろうな。
「まぁまぁ、機嫌直して…。はい、これ食べてみて」
Dちゃんが、ドン、と俺達のテーブルにパフェの皿を持ってきた。
…何これ。
「あ?これは?」
「最近の暗い空気を吹き飛ばそうと思って開発した、新メニュー。山盛りデラックスパフェよ」
…山盛りデラックスパフェ。
何が山盛りデラックスなのかと思ったら、大きなお皿の中に、コーンフレーク、チョコとバニラのアイスクリーム、生クリームがたっぷり。
その上にイチゴと、チョコレートソース。ここまではまぁ、普通のパフェだ。
山盛りデラックスパフェは、更にその上から、カットしたバナナ、りんご、桃、ブドウ、パイナップルが乗り、プチパンケーキとメープルソース、ラングドシャクッキーまでトッピングされていた。
なんとも贅沢な…欲張りなパフェだ。
「何だこれ!…カオス!」
「なんか…凄く、カロリー高そう…」
驚くC君と、食べるのを躊躇するEちゃんである。
「とりあえず食べてみてよ」
「う、うん…。…んん?」
一口パクリと口に入れたC君は、怪訝そうな顔で首を傾けていた。
その反応は何を意味するのか。
「なんか…フルーツの汁とか、溶けたアイスクリームとかがパンケーキに染み込んで…ぐじゃぐじゃしてる」
「美味しいのか不味いのかを言いなさいよ」
「…それぞれ単品なら美味かった」
あぁ。たまにあるよねそういうの。
いくら一緒に食べるのが美味しくても、一つの皿にトッピングしたら美味しくなくなるの。
ラーメンチャーハン餃子のセットってよくあるけど、ラーメンの上にチャーハンと餃子が乗ってるのって、見たことないだろ?それと一緒。
混ぜたら駄目なんだよ。別々に食べるから美味しいのであって。
このパフェは、その典型例らしい。
「え~…。駄目?不味い?」
「不味くはないけど…。美味くもない」
「何よ、はっきり言いなさいよ。…ルレイアは?」
「ん?」
俺に聞くか。
よし、じゃあまずは食べてみるとしよう。
俺は、Dちゃん特製の山盛りデラックスパフェにスプーンを突っ込んだ。
成程、確かにパンケーキに色々なフルーツやソースやアイスクリームの汁が染み込んで、何とも言えない食感になってるが…。
「…むしろそれが美味い」
特に、生臭い血の味がしないところは、最高だな。
「本当?ルレイア、アンタ素直な良い子ね!」
「おいルレイア。正直に言ってやれよ」
「正直に言ってるよ。俺は美味しいと思う」
本心である。
賛否両論ある味なのは確かだな。でも俺は美味しい。
「ありがとールレイア。アンタ良い子だわ本当。Eは?美味しい?」
「う、ん…。えっと、私は正直イマイチかな…」
Eちゃんは、色んな汁にまみれてぐちゃぐちゃのパンケーキが、お口に合わなかった様子。
駄目だったか。
「え~…?美味しいのルレイアだけ?じゃあしょうがないわね…。お会計、Cだけ徴収するわね。ルレイアとEはタダで良いわ」
「何で俺だけだよ!ずりぃよ!」
涙目になってDちゃんにすがるC君。
Eちゃんはそれを見て笑い、俺も一緒に笑った。
穏やかな時間だった。
それが例え仮初めのものだとしても、今だけは…。
「…ごめんください」
「あっ、いらっしゃいませー」
…今だけは、平穏でいたかったのに。
一瞬で、その平穏は崩された。
「さぁ…」
誰もが、そのことを考えているだろう。
犯人はいつになったら捕まるんだ。
警察は一体何をやってるんだと。
なかなか犯人の特定に至らないせいで、警察は随分と叩かれていた。
「ったく、こんなときの為にいるんだからよ。ちゃんと仕事して欲しいぜ」
やれやれ、と呆れるC君。
警察の名誉の為に言っておくが、犯人が捕まらないのは、警察の不手際ではない。
俺が、ほとんど証拠を残していないからだ。
俺はもう、何年も何百年も、同じ犯罪を繰り返し続けている。
何が証拠になるのかは、身を以て熟知している。
だから、そう簡単に捕まるつもりはない。
同じ世界で捕まるまで殺し続ける。
バレずに同じ世界で殺し続けた人数の最高記録は…軽く三桁を越えている。
俺ほどたくさんの少女を殺した人物も珍しいだろうな。
「まぁまぁ、機嫌直して…。はい、これ食べてみて」
Dちゃんが、ドン、と俺達のテーブルにパフェの皿を持ってきた。
…何これ。
「あ?これは?」
「最近の暗い空気を吹き飛ばそうと思って開発した、新メニュー。山盛りデラックスパフェよ」
…山盛りデラックスパフェ。
何が山盛りデラックスなのかと思ったら、大きなお皿の中に、コーンフレーク、チョコとバニラのアイスクリーム、生クリームがたっぷり。
その上にイチゴと、チョコレートソース。ここまではまぁ、普通のパフェだ。
山盛りデラックスパフェは、更にその上から、カットしたバナナ、りんご、桃、ブドウ、パイナップルが乗り、プチパンケーキとメープルソース、ラングドシャクッキーまでトッピングされていた。
なんとも贅沢な…欲張りなパフェだ。
「何だこれ!…カオス!」
「なんか…凄く、カロリー高そう…」
驚くC君と、食べるのを躊躇するEちゃんである。
「とりあえず食べてみてよ」
「う、うん…。…んん?」
一口パクリと口に入れたC君は、怪訝そうな顔で首を傾けていた。
その反応は何を意味するのか。
「なんか…フルーツの汁とか、溶けたアイスクリームとかがパンケーキに染み込んで…ぐじゃぐじゃしてる」
「美味しいのか不味いのかを言いなさいよ」
「…それぞれ単品なら美味かった」
あぁ。たまにあるよねそういうの。
いくら一緒に食べるのが美味しくても、一つの皿にトッピングしたら美味しくなくなるの。
ラーメンチャーハン餃子のセットってよくあるけど、ラーメンの上にチャーハンと餃子が乗ってるのって、見たことないだろ?それと一緒。
混ぜたら駄目なんだよ。別々に食べるから美味しいのであって。
このパフェは、その典型例らしい。
「え~…。駄目?不味い?」
「不味くはないけど…。美味くもない」
「何よ、はっきり言いなさいよ。…ルレイアは?」
「ん?」
俺に聞くか。
よし、じゃあまずは食べてみるとしよう。
俺は、Dちゃん特製の山盛りデラックスパフェにスプーンを突っ込んだ。
成程、確かにパンケーキに色々なフルーツやソースやアイスクリームの汁が染み込んで、何とも言えない食感になってるが…。
「…むしろそれが美味い」
特に、生臭い血の味がしないところは、最高だな。
「本当?ルレイア、アンタ素直な良い子ね!」
「おいルレイア。正直に言ってやれよ」
「正直に言ってるよ。俺は美味しいと思う」
本心である。
賛否両論ある味なのは確かだな。でも俺は美味しい。
「ありがとールレイア。アンタ良い子だわ本当。Eは?美味しい?」
「う、ん…。えっと、私は正直イマイチかな…」
Eちゃんは、色んな汁にまみれてぐちゃぐちゃのパンケーキが、お口に合わなかった様子。
駄目だったか。
「え~…?美味しいのルレイアだけ?じゃあしょうがないわね…。お会計、Cだけ徴収するわね。ルレイアとEはタダで良いわ」
「何で俺だけだよ!ずりぃよ!」
涙目になってDちゃんにすがるC君。
Eちゃんはそれを見て笑い、俺も一緒に笑った。
穏やかな時間だった。
それが例え仮初めのものだとしても、今だけは…。
「…ごめんください」
「あっ、いらっしゃいませー」
…今だけは、平穏でいたかったのに。
一瞬で、その平穏は崩された。