神殺しのクロノスタシス1
血の海と死体の山に囲まれて。

俺は、思った。

誰も、俺を助けることは出来ないんだと。

だって俺を助けようとした人は、皆、皆、皆死んでしまう。

化け物は、死体に囲まれて呆然とする俺に言った。

「全てお前のせいだ」と。

「お前が助けを求めたからだ」と。

「お前が逆らわなければ誰も殺さない。毎月一人、少女の生き血と心臓を、供物として捧げるだけで良い」

「でもそれに従わなかったり、誰かに助けを求めて私を追い出そうとするなら、私は今日のように、大勢の人間を殺してやる」

「今度はもっと、もっと大勢の人間を」

「お前のせいでこれ以上、誰かを死なせなくなったら、私に従え」

「お前は、私のものだ。一生、私の奴隷だ…」







…逆らえない。

だって逆らったら、もっと多くの人が死ぬ。

誰だって、そうするだろう?

毎月一人を殺す。殺したくないのに殺す。それは辛い。とても辛いことだけど。

でも一人を殺さなかったら、百人も、千人も殺す、って言われたら。

そうするしか、ないだろう?

俺は、間違ってないだろう?

辛いけど。助けて欲しいけど。

…俺が助かろうとしたら、また多くの人が死んでしまう。

なら俺は、もう誰にも助けを求めない。

一人で苦しみ続ける。

未来永劫、終わることのない苦しみを。

「それが…正しいこと、のはずですよね…?」







< 138 / 669 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop