神殺しのクロノスタシス1
「…君、名前は?」
「…」
「偽名じゃなくて、本名は何て言うの?」
「…吐月(とげつ)」
彼は、ぽつりとそう呟いた。
吐月君。
「吐月・サーキュラス」
「そっか、吐月君か…」
そして、もう一人。
「君の中にいる化け物は?名前は何て言うの」
「…」
「…話して良いか分からない?でも、大丈夫。私達が、君を助けてあげるから」
「…」
吐月君の、この不安に満ちた表情。
彼にとっては、とても信じられないのだろう。
今まで彼は何度も期待し、信じて、そして裏切られてきた…。
誰も自分を助けることは出来ないのだと、そう思い込んでしまっている。
その気持ちは理解出来るが…。
「…よし、吐月君。君の人生でこれが最後だ。これ以降、君を助けるという人間の言葉は信じなくて良い。だから最後の一回、私を信じてくれないだろうか」
「最後の…一回?」
「そう、これで最後。最後に一回、私を信じて欲しい」
「…」
彼にとっては、それでも恐ろしいことなのだろう。
自分が信じたせいで、また誰かが死ぬことになったらと思うと。
そう簡単に信じられないのも無理はない。
だが、私も…そう簡単に死んでやるつもりはない。
「大丈夫。私こう見えてもそこそこ強いから。そう簡単にはやられないよ」
「…」
…駄目か。
信じてもらえな、
「…雪刃(ゆきば)」
「え?」
「俺の中にいる魔物の名前…」
「…」
…雪刃。成程。
それがこの子の中にいる化け物の名前か。
それを私に教えてくれるということは…。
…信じてくれるつもりになったのか。
絶望の縁で、それでも自分に向かって差し伸べられる手に、何とか希望を見出だそうとする、この子の健気さに…応えてあげなくては、と思った。
「その雪刃って奴がお前を脅してるのか。よし…シルナ、やるぞ」
今すぐにでもぶっ飛ばしてやる、とやる気満々な羽久。
私も、出来ることならそうしたいが…。
残念ながら、それは無理だ。
「いや、羽久。まずは一度ルーデュニアに帰ろう」
「はぁぁ!?舐めてんのかお前」
私に八つ当たりしないで。
「この状況でこいつを置いて帰るなんて、何考えてるんだ」
「帰るって言っても、一日二日くらいだよ。ちょっと準備をしないと、今すぐには無理だ」
「ちっ…」
激しく舌打ちをする羽久。
これは本格的に機嫌が悪い様子。
「そんな訳だから、吐月君。少しだけ待っててもらえるかな」
「…分かりました」
「大丈夫。必ず助けてあげるから…信じて待ってて」
「…」
吐月君は、不安げに頷いた。
「…」
「偽名じゃなくて、本名は何て言うの?」
「…吐月(とげつ)」
彼は、ぽつりとそう呟いた。
吐月君。
「吐月・サーキュラス」
「そっか、吐月君か…」
そして、もう一人。
「君の中にいる化け物は?名前は何て言うの」
「…」
「…話して良いか分からない?でも、大丈夫。私達が、君を助けてあげるから」
「…」
吐月君の、この不安に満ちた表情。
彼にとっては、とても信じられないのだろう。
今まで彼は何度も期待し、信じて、そして裏切られてきた…。
誰も自分を助けることは出来ないのだと、そう思い込んでしまっている。
その気持ちは理解出来るが…。
「…よし、吐月君。君の人生でこれが最後だ。これ以降、君を助けるという人間の言葉は信じなくて良い。だから最後の一回、私を信じてくれないだろうか」
「最後の…一回?」
「そう、これで最後。最後に一回、私を信じて欲しい」
「…」
彼にとっては、それでも恐ろしいことなのだろう。
自分が信じたせいで、また誰かが死ぬことになったらと思うと。
そう簡単に信じられないのも無理はない。
だが、私も…そう簡単に死んでやるつもりはない。
「大丈夫。私こう見えてもそこそこ強いから。そう簡単にはやられないよ」
「…」
…駄目か。
信じてもらえな、
「…雪刃(ゆきば)」
「え?」
「俺の中にいる魔物の名前…」
「…」
…雪刃。成程。
それがこの子の中にいる化け物の名前か。
それを私に教えてくれるということは…。
…信じてくれるつもりになったのか。
絶望の縁で、それでも自分に向かって差し伸べられる手に、何とか希望を見出だそうとする、この子の健気さに…応えてあげなくては、と思った。
「その雪刃って奴がお前を脅してるのか。よし…シルナ、やるぞ」
今すぐにでもぶっ飛ばしてやる、とやる気満々な羽久。
私も、出来ることならそうしたいが…。
残念ながら、それは無理だ。
「いや、羽久。まずは一度ルーデュニアに帰ろう」
「はぁぁ!?舐めてんのかお前」
私に八つ当たりしないで。
「この状況でこいつを置いて帰るなんて、何考えてるんだ」
「帰るって言っても、一日二日くらいだよ。ちょっと準備をしないと、今すぐには無理だ」
「ちっ…」
激しく舌打ちをする羽久。
これは本格的に機嫌が悪い様子。
「そんな訳だから、吐月君。少しだけ待っててもらえるかな」
「…分かりました」
「大丈夫。必ず助けてあげるから…信じて待ってて」
「…」
吐月君は、不安げに頷いた。