神殺しのクロノスタシス1
「!?」
「よっ…と。遅くなったね、ごめんね」
薄暗い取り調べ室の中に。
シルナさんと羽久さんの二人が、突然出現した。
「!?あ、あなた達何処から…」
「あぁ、ちょっとうるさいから外野は黙ってて」
驚いて立ち上がった女性警察官に、羽久さんが魔法をかけた。
すると、彼女はまるで氷の像のように、ピタリと硬直した。
何のことはない。一時的に、彼女の時間を止めたのだ。
「やぁ、吐月君。遅くなってごめんね。約束通り、助けに来たよ」
お使いに行ってきたよ、みたいな軽いノリで。
シルナさんは、にっこりと微笑んだ。
…この余裕は、一体何処から…。
「た、助けにって…どうやって…」
「まずは、場所を移動しようか…。よし、moor」
シルナさんが杖を振るうと、一瞬にして俺達は、薄暗い取り調べ室から、彼が作り出した真っ白な空間に移動した。
こんな高度な魔法を、一瞬で…。
「今から、君の中の雪刃を引き剥がす。良いね?」
「い、良いねって…。良いですけど、そんなことが本当に…」
「出来るよ、必ず。だから安心して…まずはこれを着て」
シルナさんは、真っ白な外套を差し出した。
…これは?
「私が光魔法をかけて編み込んだ糸で作ったコートだよ」
「光魔法を…?」
「吐月君。君の中にいる雪刃は、闇属性が強い魔物なんだ。だから雪刃に寄生されている君の魔力も、闇属性に偏ってしまってる」
「…」
…闇属性。俺が?
いきなり属性とか言われても…。
「だからそれを利用して、闇属性の天敵である光属性の魔法、光魔法を使って、雪刃を追い出そうと思ってね。その為に、まずはそのコートを着て」
「は、はい…分かりました」
「大丈夫。洗濯はしてあるから。シルナ臭い加齢臭はしないよ」
羽久さんが謎のフォロー。
「失敬な!加齢臭なんてしないよ!」
「ふざけんな。おっさんの『俺は臭くない』が信用出来るか」
「えっ、そんなにおわな…臭くないよ!」
喧嘩が勃発してる。
シルナさんは、ちょっと不安になったのか、自分の臭いを確認していた。
大丈夫。何の臭いもしませんから。
それはともかく。
俺は恐る恐る、コートを着用した。
途端、まるで鎧でも着たかのように、身体がずっしりと重くなった。
「う…」
「大丈夫?やっぱりシルナ臭い?」
「違うでしょ!吐月君の闇の魔力が、光魔法と反発し合ってるんだよ」
そう、そっちだと思います。
全くもう、と言って、シルナさんは申し訳なさそうに俺に聞いた。
「えっと、前回…サヤノさん、って人が、軟膏を塗って雪刃を追い出そうとした、って言ってたよね?」
「…はい」
思い出す。あの不思議な薬。
塗った途端、苦しくなってきた。
今、このコートを着たときと同じように。
「あれも恐らく、原理はそのコートと同じだと思うよ。光魔法を練り込んでいたんだろう」
「…そうだったんですか…」
あのとき俺は、胸が苦しくなる薬、としか…。
「でも、そのコートだけじゃ追い払うことは出来ない。雪刃にとっては…精々タチの悪い嫌がらせ、くらいかなぁ?」
…それじゃ、追い出せないな。
雪刃の機嫌を損ねるだけだ。
「だから、これからが本番だ…。羽久、雪刃が暴れ出したら適度に止めてね」
「仕方ないな」
雪刃が本気で暴れたら、この人に止められるのだろうか?と、一瞬不安になった。
だが、ここまで来たら、もう覚悟を決めるしかなかった。
「じゃあ行くよ。…eurgp」
シルナさんの杖が白く光った、と同時に。
ロープで胸を締め付けられるような苦しみが襲ってきた。
「よっ…と。遅くなったね、ごめんね」
薄暗い取り調べ室の中に。
シルナさんと羽久さんの二人が、突然出現した。
「!?あ、あなた達何処から…」
「あぁ、ちょっとうるさいから外野は黙ってて」
驚いて立ち上がった女性警察官に、羽久さんが魔法をかけた。
すると、彼女はまるで氷の像のように、ピタリと硬直した。
何のことはない。一時的に、彼女の時間を止めたのだ。
「やぁ、吐月君。遅くなってごめんね。約束通り、助けに来たよ」
お使いに行ってきたよ、みたいな軽いノリで。
シルナさんは、にっこりと微笑んだ。
…この余裕は、一体何処から…。
「た、助けにって…どうやって…」
「まずは、場所を移動しようか…。よし、moor」
シルナさんが杖を振るうと、一瞬にして俺達は、薄暗い取り調べ室から、彼が作り出した真っ白な空間に移動した。
こんな高度な魔法を、一瞬で…。
「今から、君の中の雪刃を引き剥がす。良いね?」
「い、良いねって…。良いですけど、そんなことが本当に…」
「出来るよ、必ず。だから安心して…まずはこれを着て」
シルナさんは、真っ白な外套を差し出した。
…これは?
「私が光魔法をかけて編み込んだ糸で作ったコートだよ」
「光魔法を…?」
「吐月君。君の中にいる雪刃は、闇属性が強い魔物なんだ。だから雪刃に寄生されている君の魔力も、闇属性に偏ってしまってる」
「…」
…闇属性。俺が?
いきなり属性とか言われても…。
「だからそれを利用して、闇属性の天敵である光属性の魔法、光魔法を使って、雪刃を追い出そうと思ってね。その為に、まずはそのコートを着て」
「は、はい…分かりました」
「大丈夫。洗濯はしてあるから。シルナ臭い加齢臭はしないよ」
羽久さんが謎のフォロー。
「失敬な!加齢臭なんてしないよ!」
「ふざけんな。おっさんの『俺は臭くない』が信用出来るか」
「えっ、そんなにおわな…臭くないよ!」
喧嘩が勃発してる。
シルナさんは、ちょっと不安になったのか、自分の臭いを確認していた。
大丈夫。何の臭いもしませんから。
それはともかく。
俺は恐る恐る、コートを着用した。
途端、まるで鎧でも着たかのように、身体がずっしりと重くなった。
「う…」
「大丈夫?やっぱりシルナ臭い?」
「違うでしょ!吐月君の闇の魔力が、光魔法と反発し合ってるんだよ」
そう、そっちだと思います。
全くもう、と言って、シルナさんは申し訳なさそうに俺に聞いた。
「えっと、前回…サヤノさん、って人が、軟膏を塗って雪刃を追い出そうとした、って言ってたよね?」
「…はい」
思い出す。あの不思議な薬。
塗った途端、苦しくなってきた。
今、このコートを着たときと同じように。
「あれも恐らく、原理はそのコートと同じだと思うよ。光魔法を練り込んでいたんだろう」
「…そうだったんですか…」
あのとき俺は、胸が苦しくなる薬、としか…。
「でも、そのコートだけじゃ追い払うことは出来ない。雪刃にとっては…精々タチの悪い嫌がらせ、くらいかなぁ?」
…それじゃ、追い出せないな。
雪刃の機嫌を損ねるだけだ。
「だから、これからが本番だ…。羽久、雪刃が暴れ出したら適度に止めてね」
「仕方ないな」
雪刃が本気で暴れたら、この人に止められるのだろうか?と、一瞬不安になった。
だが、ここまで来たら、もう覚悟を決めるしかなかった。
「じゃあ行くよ。…eurgp」
シルナさんの杖が白く光った、と同時に。
ロープで胸を締め付けられるような苦しみが襲ってきた。