神殺しのクロノスタシス1
こんなこともあろうかと、準備しておいて良かった。
「魔物の召喚に使うのは…まず、これ」
「それ、昨日吐月からパクった…」
パクったって言わないでよ。
ちゃんと合意の上でもらいました。
小瓶に入れた、吐月君の血液である。
召喚の儀には、不可欠の代物だ。
「次に…これ」
「あ…?それは何?」
「昨日レティシアちゃんのところに行って、借りてきたんだ」
「レティシア…?シルナがロリコン拗らせてる子?」
「拗らせてないから。立派に王立図書館の司書さんしてるから!」
アポなしでいきなり訪ねたのに、快く迎えてくれた。
レティシアちゃんに頼んで、封印書庫からこの召喚魔導書を持ってきてもらった。
この魔導書は、通常、王立図書館の地下深くに封印され、人の手に渡ることはない。
妄りに魔物を喚び出せば、吐月君のような悲劇が起こりかねないから。
この手の魔導書を手にするには、国王の許可が…フユリ様の許可が要る。
私は昨日王宮を訪ね、フユリ様に直談判した。
助けなければならない者がいる。その為に、召喚魔導書を使わせて欲しい、と。
フユリ様は、多くを聞かなかった。
「分かりました、許可します」
彼女は一言、そう言っただけだった。
ただし、彼女の目が。
私を見つめるその目は、あなたを信じています、と言っていた。
私の信用を裏切ることはしないと信じています、と。
勿論、フユリ様の信用を裏切る気はない。
彼女が私を信じてくれているのだから、それに応えなくては。
「あと…これ。召喚に必要なもの、三つ目」
私は、一枚の紙切れを取り出した。
ただのぺらぺらな紙切れだが、これが大事なのだ。
「それは何だよ?」
「私がネットカフェでこっそり描いた、召喚魔法陣」
「ネカフェでそんなもん描いてたのかよ!」
私が、何もせずにネットカフェを満喫していたと思ったら、それは大きな間違いだ。
そりゃネットカフェも楽しんだけど、ちゃんとやるべきことはやっている。
「この三つを使って、魔物を召喚する」
「…出来るのか?」
「多分」
実は、やったことないんだけどね。
私、魔力量はともかく、魔物が憑きやすい体質ではないらしくて。
でも、今は四の五の言っていられない。
私は魔導書の手順に従って、魔法陣に吐月君の血を垂らした。
そして、強く魔力を込めながら魔導書に書かれてある呪文を唱えた。
私は魔物と契約が出来る器ではない。
だから、召喚が上手く行かない可能性はある。
だが…吐月君の…魔物が「好みな」血を触媒にすれば…。
すると。
突然、血を垂らした魔法陣が光り出した。
「…!?」
ポンッ、と音がして。
魔法陣の中から、目玉に黒い羽二枚生えたような異形の生き物が出てきた。
これだけ聞けば、なんとも勇ましい生き物のように思えるが。
体躯の大きさは、人の手のひらほどもない。
精々、みかんくらいの大きさである。
その姿は、まるで小さなコウモリ。
パタパタと音を立てる羽根が、なんとも可愛らし…いや、威厳に満ち溢れていた。
「…は?」
これには、羽久もポカン。
魔物と聞いたら…首が三つくらい生えたキメラや、雪刃みたく、悪鬼のような化け物を想像したのだろうが。
残念ながら、この魔物は違う。
「…!?こんな、蝿に毛が生えたような魔物が…雪刃の代わりを務められるのか!?」
挙げ句、この暴言である。
こらこら。
すると、蝿に毛が生えた呼ばわりされた魔物が、怒り始めた。
「魔物の召喚に使うのは…まず、これ」
「それ、昨日吐月からパクった…」
パクったって言わないでよ。
ちゃんと合意の上でもらいました。
小瓶に入れた、吐月君の血液である。
召喚の儀には、不可欠の代物だ。
「次に…これ」
「あ…?それは何?」
「昨日レティシアちゃんのところに行って、借りてきたんだ」
「レティシア…?シルナがロリコン拗らせてる子?」
「拗らせてないから。立派に王立図書館の司書さんしてるから!」
アポなしでいきなり訪ねたのに、快く迎えてくれた。
レティシアちゃんに頼んで、封印書庫からこの召喚魔導書を持ってきてもらった。
この魔導書は、通常、王立図書館の地下深くに封印され、人の手に渡ることはない。
妄りに魔物を喚び出せば、吐月君のような悲劇が起こりかねないから。
この手の魔導書を手にするには、国王の許可が…フユリ様の許可が要る。
私は昨日王宮を訪ね、フユリ様に直談判した。
助けなければならない者がいる。その為に、召喚魔導書を使わせて欲しい、と。
フユリ様は、多くを聞かなかった。
「分かりました、許可します」
彼女は一言、そう言っただけだった。
ただし、彼女の目が。
私を見つめるその目は、あなたを信じています、と言っていた。
私の信用を裏切ることはしないと信じています、と。
勿論、フユリ様の信用を裏切る気はない。
彼女が私を信じてくれているのだから、それに応えなくては。
「あと…これ。召喚に必要なもの、三つ目」
私は、一枚の紙切れを取り出した。
ただのぺらぺらな紙切れだが、これが大事なのだ。
「それは何だよ?」
「私がネットカフェでこっそり描いた、召喚魔法陣」
「ネカフェでそんなもん描いてたのかよ!」
私が、何もせずにネットカフェを満喫していたと思ったら、それは大きな間違いだ。
そりゃネットカフェも楽しんだけど、ちゃんとやるべきことはやっている。
「この三つを使って、魔物を召喚する」
「…出来るのか?」
「多分」
実は、やったことないんだけどね。
私、魔力量はともかく、魔物が憑きやすい体質ではないらしくて。
でも、今は四の五の言っていられない。
私は魔導書の手順に従って、魔法陣に吐月君の血を垂らした。
そして、強く魔力を込めながら魔導書に書かれてある呪文を唱えた。
私は魔物と契約が出来る器ではない。
だから、召喚が上手く行かない可能性はある。
だが…吐月君の…魔物が「好みな」血を触媒にすれば…。
すると。
突然、血を垂らした魔法陣が光り出した。
「…!?」
ポンッ、と音がして。
魔法陣の中から、目玉に黒い羽二枚生えたような異形の生き物が出てきた。
これだけ聞けば、なんとも勇ましい生き物のように思えるが。
体躯の大きさは、人の手のひらほどもない。
精々、みかんくらいの大きさである。
その姿は、まるで小さなコウモリ。
パタパタと音を立てる羽根が、なんとも可愛らし…いや、威厳に満ち溢れていた。
「…は?」
これには、羽久もポカン。
魔物と聞いたら…首が三つくらい生えたキメラや、雪刃みたく、悪鬼のような化け物を想像したのだろうが。
残念ながら、この魔物は違う。
「…!?こんな、蝿に毛が生えたような魔物が…雪刃の代わりを務められるのか!?」
挙げ句、この暴言である。
こらこら。
すると、蝿に毛が生えた呼ばわりされた魔物が、怒り始めた。