神殺しのクロノスタシス1
「失礼だぞお前!久し振りに人間界に来たと思ったら。俺様を誰だと思ってる!」
「え、いや、だって見るからに弱そ、」
「こらこら羽久。人を見た目で判断するものじゃないよ」
そりゃ確かに、見た目はちょっとあの…。弱そうに見えなくもないけど。
でも、弱そうなのは見た目だけなのだ。
「失礼を致しました、ベルフェゴール様」
私は羽久の代わりに謝り、魔物の前に膝をついた。
この魔物の名前は、ベルフェゴール。
魔物の中でも、最上位に位置する…冥王クラスの魔物なのだ。
「…やい!俺様を喚んだのはお前か?」
「えぇ…そうです」
「魔力はすこぶる不味いが、血が美味かったから来てやったが…。この血、本当にお前の血か?」
…さすが、鋭いな。
「いいえ、この血は…私のものではありません」
「…」
私がそう答えると、ベルフェゴールの小さな体躯から、溢れ出さんばかりの殺気が迸った。
「…召喚に使う血は、召喚者本人のものであることが掟。違う人間の血を使うなど…大罪に値する」
「承知の上です」
「ルール違反には、罰を与えなければならん。死を以て…償ってもらう」
爆発的に膨れ上がった殺気が、私の前に降りかかった。
「お前…!」
羽久が、ベルフェゴールに杖を向けた。
しかし。
「…と、言いたいところだが…。お前は無理だな」
ベルフェゴールは、溜め息混じりに脱力した。
膨れ上がっていた殺気が、一気に霧散した。
いきなりの態度の急変に、羽久は拍子抜けしていたが。
私は、そうなると思っていたから驚かなかった。
「賢明なご判断、感謝します」
「それで?俺様を喚んだ理由は何だ?それから…その血は、誰のものなんだ?」
「単刀直入に言います、ベルフェゴール様…。あなたには、この血の持ち主と契約してもらいたい」
「…」
ベルフェゴールは、パタパタと羽を動かして、
「…その血、今まで飲んだことがないくらい美味かった。だから、この血の持ち主と契約するのはやぶさかじゃない」
「そうですか」
それは何より。
「でも…契約者本人がいないのは何故だ?契約者は何処にいる?」
「契約者は今、心ない悪しき魔物に取り憑かれ、殺戮を強要されています」
「…」
それを聞いたベルフェゴールは、明らかに気分を害したようだった。
「…契約者を無理矢理乗っ取って、望まない殺戮を強要するなんて…魔物の風上にも置けねぇ。最低のクズ野郎だ」
「私もそう思います。だから、今からその魔物を、彼の身体から引き剥がす」
「…」
「その後に、あなたは彼の身体に入って欲しい。彼と契約して…彼を助けてあげて欲しいのです」
上手く行くかどうかも分からない、これは賭けだ。
上手く行かなければ、吐月君は死んでしまう。
でも…放っておけば、いずれにしても吐月君は、雪刃を引き剥がした瞬間に死んでしまう。
雪刃を引き剥がさなければ、既に吐月君は死んだようなものだ。
だから、一縷の望みに賭ける。
「…良いぜ。やってやろうじゃないか…。そいつの魔力は、この血と同じくらい美味いんだろうな?」
「それはもう…味は保証しますよ」
何せ、あの雪刃が何千年も執着して、離れなかった身体だからな。
魔物にとっては、正に三ツ星クラスの味に違いない。
「え、いや、だって見るからに弱そ、」
「こらこら羽久。人を見た目で判断するものじゃないよ」
そりゃ確かに、見た目はちょっとあの…。弱そうに見えなくもないけど。
でも、弱そうなのは見た目だけなのだ。
「失礼を致しました、ベルフェゴール様」
私は羽久の代わりに謝り、魔物の前に膝をついた。
この魔物の名前は、ベルフェゴール。
魔物の中でも、最上位に位置する…冥王クラスの魔物なのだ。
「…やい!俺様を喚んだのはお前か?」
「えぇ…そうです」
「魔力はすこぶる不味いが、血が美味かったから来てやったが…。この血、本当にお前の血か?」
…さすが、鋭いな。
「いいえ、この血は…私のものではありません」
「…」
私がそう答えると、ベルフェゴールの小さな体躯から、溢れ出さんばかりの殺気が迸った。
「…召喚に使う血は、召喚者本人のものであることが掟。違う人間の血を使うなど…大罪に値する」
「承知の上です」
「ルール違反には、罰を与えなければならん。死を以て…償ってもらう」
爆発的に膨れ上がった殺気が、私の前に降りかかった。
「お前…!」
羽久が、ベルフェゴールに杖を向けた。
しかし。
「…と、言いたいところだが…。お前は無理だな」
ベルフェゴールは、溜め息混じりに脱力した。
膨れ上がっていた殺気が、一気に霧散した。
いきなりの態度の急変に、羽久は拍子抜けしていたが。
私は、そうなると思っていたから驚かなかった。
「賢明なご判断、感謝します」
「それで?俺様を喚んだ理由は何だ?それから…その血は、誰のものなんだ?」
「単刀直入に言います、ベルフェゴール様…。あなたには、この血の持ち主と契約してもらいたい」
「…」
ベルフェゴールは、パタパタと羽を動かして、
「…その血、今まで飲んだことがないくらい美味かった。だから、この血の持ち主と契約するのはやぶさかじゃない」
「そうですか」
それは何より。
「でも…契約者本人がいないのは何故だ?契約者は何処にいる?」
「契約者は今、心ない悪しき魔物に取り憑かれ、殺戮を強要されています」
「…」
それを聞いたベルフェゴールは、明らかに気分を害したようだった。
「…契約者を無理矢理乗っ取って、望まない殺戮を強要するなんて…魔物の風上にも置けねぇ。最低のクズ野郎だ」
「私もそう思います。だから、今からその魔物を、彼の身体から引き剥がす」
「…」
「その後に、あなたは彼の身体に入って欲しい。彼と契約して…彼を助けてあげて欲しいのです」
上手く行くかどうかも分からない、これは賭けだ。
上手く行かなければ、吐月君は死んでしまう。
でも…放っておけば、いずれにしても吐月君は、雪刃を引き剥がした瞬間に死んでしまう。
雪刃を引き剥がさなければ、既に吐月君は死んだようなものだ。
だから、一縷の望みに賭ける。
「…良いぜ。やってやろうじゃないか…。そいつの魔力は、この血と同じくらい美味いんだろうな?」
「それはもう…味は保証しますよ」
何せ、あの雪刃が何千年も執着して、離れなかった身体だからな。
魔物にとっては、正に三ツ星クラスの味に違いない。